研究概要 |
本研究では,光分布制御による分子群操作に基づく光・分子協調コンピューティング技術の開発を目的とし,並列光トラップによるビーズ接合DNAに対する操作方法の確立,光によるDNA反応技術の開発,分子群集合演算アルゴリズムの開発と実装,並列情報処理への応用展開をめざした.本年度の研究により得られた成果・知見は以下のとおりである. 1.前年度までに開発した局所温度制御技術と光トラップを組み合わせ,適切なレーザー照射条件を設定することにより,基板上に結合したDNAをマイクロビーズ上に転送できることを実証した.本手法により,溶液全体の温度をサーマルサイクラーで制御したときに結合するDNAの80%以上の高効率で,ビーズにDNAを結合できることがわかった.また,ビーズ上へのDNA転送と解離を繰り返し実行できることを確認した.本操作はDNA情報の読み出しに対応付けられる. 2.前年度に考案した,2次0-1計画問題への変換により最大クリーク問題を解くアルゴリズムについて,すべての条件でヘアピンDNAによる自律計算が正しく実行されるよう符号化法を改良した.また,DNA実験により,計画問題の1次項と2次項が結合したDNAを合成できることを確認した. 3.光分布制御により並列アクセスが可能であり,かつ,回折限界を超えたナノスケールの解像度をもつ暗号化画像メモリを考案し,DNAの状態変化を利用した実装方法について検討した.また,光・分子協調コンピューティングに基づく情報処理システムの情報密度や処理時間,情報転送レートなどと,システムパラメータとの関係を数値的に評価し,システムの基本特性を明らかにした.
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