研究概要 |
肝臓の時計遺伝子のリズムが交感神経により制御されることを、時計遺伝子の発現、神経切断実験等で証明した(Terazono et al. PNAS,2003)。さらに、メラトニンが視交叉上核を介し全身の交感神経活動を制御することを証明した(J.Physiol,2003)。また、我々はマウス髄液内マイクロダイアリシスプローブで数ヶ月もメラトニン分泌をモニターできる系を開発した。これにより、松果体よりのメラトニン分泌は、アミン神経性制御性と非神経制御性の2峰性の分泌があることが初めて解明された(Nakahara et al. PNAS,2003)。これにより、従来は行動リズムしかなかったリズムモニターを、初めて直接ホルモンで見ることが可能となった。さらに、マウスの肝広範切除術を用い、細胞分裂と生態リズムの関係を検索した。この系では、70%以上の肝細胞が有糸分裂に入ることで、細胞周期と体内時計の相関を考えるのに理想の系である。無リズムのCry1Cry2ダブルノックアウトマウスでは、切除後のM期流入が遅れることがわかった。また、マウスの肝切除後の再生過程で、時計が細胞周期関連遺伝子を制御し、Cyclin B1、Cdc2 kinaseの活性を制御する。特にwellは時計遺伝子の形成するコア・ループに直接制御されることを発見した(Science,2003)。長年の課題である、時計遺伝子発現を可視化して、約10年前に樹立した脳スライスカルチャー培養系に応用し、リアルタイムモニター系を確立し数ケ月に及ぶリズム観察が可能な視交叉上核のスライスカルチャー系を確立し、超高感度CCDカメラを組み合わせ、世界で初めて、時計細胞一個レベルでの遺伝子転写発現のリズムを観察し、細胞相互のリズム伝達機構の解明に成功した(Science,2003)。
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