研究概要 |
高齢化社会となり種々の脳機能障害で悩む人が増えている。神経移植は障害された脳機能を再建する有用な手段であるが、最大の課題はドナー細胞の確保である。しかし近年、自己複製する神経幹細胞が成人の脳内にも存在し、2,3の部位ではかなり活発に神経の新生(turnover)がおこっていることがわかってきた。 本年度は幹細胞から神経細胞への分化のメカニズムを明らかにするため、マウスのES細胞を5段階法(ES細胞-Embryoid body-nestin陽性細胞-nestin陽性細胞の増殖-神経細胞)で分化させ、神経系の発達・分化を制御する遺伝子を明らかにすることを目的として、nestin 陽性細胞の増殖期(神経幹細胞、Stage4)と神経細胞(stage5)における遺伝子発現を10480遺伝子につきマイクロプレート法を用いて解析した。 神経幹細胞(stage4)で発現増加(3.5倍)する遺伝子群:293遺伝子を同定。 これらの中で特にsmoothend(Shhレセプター)、protein NID67(NGFで誘導されイオンチャネルを構成)、BIMP1(Bcl10に結合し、NFkBを活性化)、NMYC1(Shhで誘導されるNmycで、神経前駆細胞を増殖させる)、POU3F1(Schwann細胞の発達に関与するOct-6)、Stanniocalcin2(エストロゲン反応遺伝子、Ca/phosphate ホメオスタティツクホルモン)等、とくに興味のあるものが16個存在していた。 神経細胞(stage5)で発現増加(3.5倍以上)する遺伝子群:377遺伝子を同定。 この中には、BM88,SOX10,SPNB3,KIF1B, Z16,PNCK, GPR85,Neuritin, Astrotactin, DCN, Somatostatin, CCK, FGF13,FGF9,LHX2等、興味を引くものが36個存在していた。 今後これらの遺伝子と幹細胞維持及び神経細胞分化との関係について解析する。
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