研究概要 |
グルタミン酸作動性シナプスのシナプス後部の形質膜直下にはシナプス後肥厚部(PSD)と呼ばれる構造が存在する。PSDは多種類の膜蛋白質・足場蛋白質・シグナル分子・細胞骨格蛋白質の複合体であり、その分子構成および分子構築の原理について明らかにする為に以下の実験を行った。 (1)4種類のPSD蛋白質(PSD-95,GKAP,Shank,Homer)について、その単一シナプスあたりの分子数を推定した。GFP1分子の蛍光強度を基礎として、蛍光ビーズの蛍光強度がGFP何分子に相当するのかを求め、更にGFP融合PSD蛋白質を発現する培養海馬神経細胞を利用して、PSD蛋白質のシナプスあたりの量を測定した。単一の海馬グルタミン酸作動性シナプスにはおよそ100-400個のPSD-95,GKAP,Shank,Homer各分子が存在し、これら4つの分子でPSDの全質量のおよそ10%を占める事が明らかになった。 (2)TLSは元来liposarcomaにおける転座から同定された遺伝子であり、RNA結合蛋白質であるが、培養海馬神経細胞においてはTLSは分化に伴いスパインに局在を変化させる事を見出した。TLSのスパインへの移行は代謝型グルタミン酸受容体の活性化により促進され、一方でTLSのノックアウト由来の海馬神経細胞ではスパインの形態が異常になる。従ってTLSはRNA結合蛋白質として代謝型グルタミン酸受容体の活性依存的にスパインに輸送され、その形態を制御する蛋白質である事が明らかになった。
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