血管細胞の機械刺激受容機構と応答遺伝子の包括的解析に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15200034
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 安藤 譲二 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20159528)
• 研究分担者: 山本 希美子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00323618)
• キーワード: 内皮細胞 / 剪断応力 / 遺伝子 / 血管リモデリング / 血行力学因子 / DNAマイクロアレイ / DNAチップ / 粥状動脈硬化

研究概要

本年度は剪断応力に応答する内皮遺伝子の包括的解析を行った。培養した人臍帯静脈内皮細胞と人冠状動脈内皮細胞に流れ負荷装置を使って、動脈レベル(15dynes/cm^2)あるいは静脈レベル(1.5dynes/cm^2)の層流性あるいは乱流性の剪断応力を作用させたときの内皮遺伝子(約5600)の発現変化をDNAマイクロアレイ法で解析した。その結果、層流性の動脈レベルの剪断応力により全体の約3%の遺伝子の発現が有意(発現が2倍以上あるいは半分以下)に変化した。仮に内皮細胞に発現する総遺伝子数を2万とすると約600の遺伝子が剪断応力に応答すると考えられる。この割合は層流性の静脈レベルの剪断応力では約2%、乱流性の静脈レベルの剪断応力では約1%に減少した。層流性の動脈レベル層流性の剪断応力は抗酸化ストレスに働く遺伝子の発現を高め、一方、細胞増殖に関連する遺伝子の発現を抑制する効果が認められた。また、人の粥状動脈硬化病変の発生と関係する乱流性の剪断応力はとくに血管のリモデリングに関わる遺伝子(プラスミノーゲン・アクチベータ、腫瘍変換増殖因子、エンドセリン、コラーゲン・タイプ4,メタロプロテイネースなど)の発現を変化させた。層流の剪断応力に対する内皮遺伝子の1-48時間までの時系列的な反応パターンをクラスター解析したところ、発現が増加する場合は5クラスター、発現が減少する場合は6クラスターに分類することができた。剪断応力に対する時系列的応答パターンは多様であることが示された。

研究成果

• [文献書誌] K.Yamamoto, T.Takahashi, T.Asahara, N.Ohura, T.Sokabe, A.Kamiya, J.Ando: "Proliferation, differentiation, and tube formation by endothelial progenitor cells in response to fluid shear stress."J.Appl.Physiol. 95. 2081-2088 (2003)
• [文献書誌] N.Ohura, K.Yamamoto, S.Ichioka, T.Sokabe, H.Nakatsuka, A.Baba, M.Shibata, T.Nakatuska, K.Harii, Y.Wada, T.Kohro, T.Kodama, J.Ando: "Global Analysis of Shear Stress-Responsive Genes in Vascular Endothelial Cells."J.Atheroscler.Thromb.. 10. 304-313 (2003)
• [文献書誌] D.Kaneko, T.Narita, J.P.Gong, Y.Osada, J.Ando, K.Yamamoto, S.Ohnishi, V.V.Yaminsky: "Thickness decrease of a grafted polyelectolyte membrane exposed to shear flow."J.Polym.Sci.Part B : Polym.Phys.. 41. 2808-2815 (2003)
• [文献書誌] K.Yamamoto, T.Sokabe, N.Ohura, H.Nakatsuka, A.Kamiya, J.Ando: "Endogenously released ATP mediates shear-stress-induced Ca^<2+> influx into pulmonary artery endothelial cells."Am.J.Physiol Heart Circ.Physiol. 285. H793-H803 (2003)
• [文献書誌] M.Iwasaka, K.Yamamoto, J.Ando, S.Ueno: "Veriication of magnetic field gradient effects on medium convection and cell adhesion."J.Appl.Phys.. 93. 6715-6717 (2003)
• [文献書誌] M.Isshiki, J.Ando, K.Yamamoto, T.Fujita, Y.Ying, R.G.W.Anderson: "Sites of Ca^<2+> wave intiation move with caveolae to the trailing edge of Migrating cells."J.Cell Sci.. 115. 475-484 (2002)