研究課題
本年度はヒトの動脈硬化病変部位に高発現するウロキナーゼ型プラスミノーゲン・アクチペータ(uPA)遺伝子の流れ刺激に対する応答について検討を行った。培養ヒト冠動脈内皮細胞に平行平板型装置で層流を、回転円盤型装置で乱流を作用させたところ、uPA mRNAレベルが乱流で増加し、層流で減少した。分泌されるuPA蛋白も乱流で増加し、層流で減少することが確認された。層流によるuPA遺伝子発現の増加は転写を介しており、転写因子GATA6が活性化されてuPA遺伝子のプロモータにあるコンセンサス・シークエンス(剪断応力応答配列)に結合することでuPA遺伝子の発現が抑制されることが示された。さらに層流にはuPA mRNAの分解速度を速める効果もあり、転写抑制と相まって遺伝子発現の抑制を引き起こしていることが分かった。一方、乱流は転写に影響せず、uPA mRNAの安定化を促進することでuPA遺伝子の発現を亢進させることが示された。このuPA mRNAの安定化にはmRNAの3'側に存在するAUリピート配列に結合する40kDと45knのRNA結合蛋白が関与する可能性が示された。したがって、血管内皮細胞には血流の性質の違い、すなわち、乱流と層流を区別して認識し、それぞれに特異的な遺伝子応答を起こす機構が備わっていると考えられた。また、動脈硬化巣が血管の湾曲部や分岐部の乱流性の血流が作用する部位に好発するので、動脈硬化巣のuPAの高発現に乱流によるuPA遺伝子の発現増加作用が関わっている可能性が考えられた。
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