ナノ変調構造制御による生体用低弾性率型超弾塑性機能チタン材料の創製

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15200035
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 豊橋技術科学大学
• 研究代表者: 新家 光雄 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (50126942)
• 研究分担者: 服部 友一 名城大学, 理工学部, 助教授 (40172936) ; 春日 敏宏 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (30233729) ; 福井 壽男 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50090147) ; 鈴木 昭弘 大同特殊鋼(株), 技術開発研究所, 主任研究員 ; 赤堀 俊和 豊橋技術科学大学, 工学部, 助手 (00324492)
• キーワード: 生体用チタン材料 / 低弾性率 / 生体適合性 / 力学的特性 / 超弾性特性 / 加工熱処理 / 強加工

研究概要

骨代替器具や人工血管を構成するステント等の生体材料では、生体親和性が良好で弾性率が骨(20〜40GPa)類似であることに加え、高加工度成形が可能、すなわち超塑性で、変形に対して形状を保つことが重要であるために超弾性であることが望まれる。生体親和性に優れ、弾性率が骨類似である上記生体材料としてチタン合金が有利であることから、無毒性元素から構成され、低弾性率を示すチタン合金の開発が進められている。申請者らが中心となって開発を進めてきた生体用Ti-Nb-Ta-Zr系合金では、引張試験で超弾性を示す民生用超弾塑性チタン合金が示す場合の応力-歪曲線と同様な挙動が観察されており、超弾塑性発現の可能性が極めて高い。また、民生用超弾塑性チタン合金では、冷間加工性が極めて優れており(超塑性)、しかも高延性を保ったまま強化できるため、低弾性率を保ったまま超弾性で高強度とすることができるとされており、このような優れた力学的特性も生体用Ti-Nb-Ta-Zr系合金に付与することができると期待される。そこで、Ti-Nb-Ta-Zr系合金を基礎として、(1)超弾塑性を発現し、Ti-Nb-Ta-Zr系合金をベースとする低弾性率である無毒性元素からなるチタン合金を設計し、(2)超弾塑性発現のためのプロセッシングの確立、(3)超弾塑性発現機構の解明、(4)ナノスケールでの構造変調の解析、(5)その力学的特性および生体親和性評価、(6)ステント等の製造に匹敵する精密加工技術の確立、さらに(6)高分子との複合化技術までを確立することを本研究の目的とする。特に、弾性率では現在70GPa程度であるものを40GPa以下にすることを目標値として設定する。超弾性としては、弾性伸びが5%以上を目標値とする。また、生体材料としてだけでなく、福祉材料としても実用化する場合には低コストであることも重要であることから、低コスト合金とすることも念頭に置き研究・開発を行う。
・Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の線引材における引張特性は,いずれもSUS316Lと同等以上の引張強度を有しており,胸骨ワイヤー等への適用は十分可能であると考えられる。
・Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の線引材では,引張試験時の変形挙動が変化し,最大弾性ひずみ量が増加する。また,Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の線引材(φ1.0mm)に,さらなる冷間線引き加工を施した場合,その変形挙動および弾性ひずみ量は変化しない。
・Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の線引材に加工熱処理を施した場合,溶体化処理により,十分な再結晶が起こることによって,特異な変形挙動は消滅し,弾性ひずみ量は低下する。

研究成果

• [文献書誌] 赤堀俊和, 新家光雄, 石水敬太, 福井壽男, 鈴木昭弘: "生体用Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の疲労特性に及ぼす加工熱処理の影響"日本金属学会誌. 67・11. 653-660 (2003)
• [文献書誌] 坂口信人, 新家光雄, 赤堀俊和, 斎藤 卓, 古田忠彦: "生体用Ti-XNb-10Ta-5Zr合金のミクロ組織,引張特性および弾性率に及ぼすNb添加量の影響"日本金属学会誌. 67・11. 681-687 (2003)
• [文献書誌] 赤堀俊和, 新家光雄, 樋口達也, 森井浩一: "Ti-NiおよびTi-Ni-Co系形状記憶合金のミクロ組織と力学的特性"日本金属学会誌. 67・10. 528-536 (2003)
• [文献書誌] M.Niinomi: "Recent trends in Development of Titanium Based Materials for Biomedical Applications"Proc.CTMTEC. 175-186 (2003)
• [文献書誌] T.Kasuga, M.Nogami, T.Hattori, M.Niinomi: "Preparation of Calcium Phosphate Invert Glass-Ceramics with Bioactive and Their Coating on Titanium Alloys"Glastechnische Berichte Glass Science and Technology. 75C2. 338-341 (2003)
• [文献書誌] T.Akahori, M.Niinomi, H.Fukui, A.Suzuki: "Fatigue Characteristics of Low Rigidity Titanium Alloy, Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr, for Biomedical Applications"Proc.ATEM'03 (Int.Conf.On Advanced Technology in Experimental Mechanics). (CD-ROM). (2003)
• [文献書誌] T.Y.L.Zhou, M.Niinomi, T.Akahori, Gunawarman: "Effect of Ta Content on Young's Modulus and Microstructure of Binary Ti-Ta Alloys"Proc.ATEM'03 (Int.Conf.On Advanced Technology in Experimental Mechanics). (CD-ROM). (2003)
• [文献書誌] T.Mizumoto, M.Niinomi, T.Akahori, H.Fukui: "Effects of Microstructureson Fatigue Properties of Dental Drawn and Cast Ag-Pd-Cu-Au-Zn Alloys"Proc.ATEM'03 (Int.Conf.On Advanced Technology in Experimental Mechanics). (CD-ROM). (2003)
• [文献書誌] N.Sakaguchi, M.Niinomi, T.Akahori, T.Saito, T.Furuta: "Effect of Nb Content on Mechanical Properties of Ti-Nb-Ta-Zr Quaternary Alloys Fabricated by Powder Metallurgy Processing for Biomedical Applications"Proc.ATEM'03 (Int.Conf.On Advanced Technology in Experimental Mechanics). (CD-ROM). (2003)
• [文献書誌] T.Mizumoto, M.Niinomi, T.Akahori, H.Fukui (Invited Paper): "Effects of Casting Deffects and Microstructure on Fatigue Properties of Cast Ag-Pd-Cu-Au-Zn Alloy for Dental Applications"Proc.Thermec'2003, Leganes, Madrid, Spain, Materials Science Forum. 426・432. 3207-3212 (2003)
• [文献書誌] T.Kasuga, M.Nogami, M.Niinomi: "Novel Machinable Calcium Phosphate Glass-Ceramics for Biomedical use"Proc.Thermec'2003, Leganes, Madrid, Spain, Materials Science Forum. 426・432. 3183-3188 (2003)
• [文献書誌] T.Akahori, M.Niinomi, A.Suzuki(Invited Paper): "Fatigue Characteristics of Dental Titanium Alloy, Ti-6Al-7Nb, Conducted with Thermochemical Heat Processing"Proc.Thermec'2003, Leganes, Madrid, Spain, Materials Science Forum. 426・432. 3073-3078 (2003)