研究概要 |
1.動脈壁に及ぼす加齢および血圧・血流量上昇の影響 ラット総頸動脈壁中膜のコラーゲンとエラスチンの面積分率には加齢による変化はないこと,成長段階ではコラーゲンは外壁側に多く分布しているが加齢に伴って一様となり,また平滑筋細胞が肥厚して壁が厚くなることがわかった。ラットに高血圧を発症させた後に,総頸動脈の血流量を増加させたところ,これら総頸動脈壁の壁円周方向応力は正常レベルに維持されるが,壁せん断応力は高いままであり,また,壁のスティフネスは高血圧のみを発症させた場合よりも高い傾向にあることがわかった。 2.高内圧負荷のもとで培養した静脈壁の力学的特性 1〜50mmHgの内圧を作用させながら,家兎の大腿静脈を培養したところ,10mmHg以上の内圧負荷下すると1週間後の大腿静脈の壁周方向応力および力学的特性は正常レベルであること,静脈壁の適応にはある程度の負荷が必要なことがわかった。 3.力学的負荷および加齢が治癒腱の力学的特性に及ぼす影響 家兎膝蓋腱中央部に欠損を作成し,治癒期間中の力学的負荷が治癒再生組織の引張特性に及ぼす影響を調べたところ,欠損両端部の骨片の採取は再生組織の引張特性と細胞密度に影響を及ぼすこと,除荷は組織の治癒再生に悪影響を及ぼすこと,組織再生と治癒能力は成熟,加齢によって衰えることがわかった。また,残存組織全体の強度は術後大きく低下するが,下位構造である線維束の強度は変化しないことがわかった。 4.負荷の変化が海綿骨の形態および力学的特性に及ぼす影響 ラットの両下肢を胴体に固定して大腿骨に作用する負荷を減少させて飼育した後に,通常状態に戻して負荷を回復させ,さらに飼育したところ,大腿骨頸部の海綿骨の面積と骨梁の硬さは,いずれも負荷減少によって顕著に減少,低下し,負荷回復によって回復するが,もとの値に戻るには長期間必要であることがわかった。
|