研究概要 |
1.動脈壁リモデリングに及ぼす成長と加齢、血圧変化の影響 生後8、16、32、64週のラットの総頸動脈を摘出して、成長、加齢に伴う動脈の変化を調べた結果,血流量、円周方向ひずみは32週から、血圧は16週から、内幕+中膜厚さと円周方向弾性係数は64週で有意に増加することがわかったが,これらの形態学的、力学的変化は必ずしも組織構成要素の組成とは対応しないことが明らかになった.また,16週間DOCA食塩法によって高血圧を発症させた32週齢と64週齢のラットについても同様な観察を行ったところ,いずれも高血圧によって内幕+中膜厚さ、壁の収縮性、弾性係数が有意に増加したが,これらの変化も組成の変化とは良い対応を示さなかった.そこで、温度制御応力緩和試験でコラーゲンの架橋結合の程度を解析したところ、これらの力学的性質の変化と何らかの関係があることが示唆された. 2.成長と加齢、除荷と再負荷が腱・靭帯治癒再生組織のメカニクスに及ぼす影響 成熟家兎の膝蓋腱中央部に矩形欠損を作成し、さらにストレスシールド法を用いて除荷の手術を施したあと3週間経たのちに、再負荷の操作を施し、3,9週間後に、欠損部に形成される再生組織(これは移植腱のモデルでもある)と両側の残存腱組織の力学特性を調べた.その結果,再生組織の強度は急速に増加するとともに,除荷によって一旦低下していた残存組織の強度も再負荷によって急速に上昇することがわかった.しかしながら、9週間再負荷しても残存組織の強度はもとには戻らなかったことから,短期間であっても除荷は組織の治癒に悪い影響を与えることがわかった.平行して、各種成長因子の効果や組織構造、下部組織であるコラーゲン線維束の力学特性も詳細に調べた. 3.細胞のメカニクスと構造に及ぼす負荷の影響と解析 タンパク分子などの捕捉に利用されているレーザピンセットを、より大きいサイズの細胞の捕捉に利用し,細胞の力学特性を調べる研究,及び,細胞を両端からカンチレバーで把持して力を作用させる実験装置を,より大きな変位に対応できるように改善する研究を進め,細胞の力学的性質の詳細に関する研究を進めた.
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