研究概要 |
ミトコンドリアゲノム多型と個体のエネルギー産生能力との関連を明らかにするために、肥満者・非肥満者・一般の糖尿病患者・血管病変の顕著な糖尿病患者・百寿者・パーキンソン病患者・アルツハイマー病患者、各96人合計672人のミトコンドリアゲノム全塩基配列を決定した。これに基づいてミトコンドリア多型データベース(http://www.giib.or.jp/mtsnp/)を構築し、分子系統学的解析を行った。3497C>T(ND1:A64V)多型と1119T>C(12SrRNA:472U>C)多型は、若年肥満者96名中の5名で検出されたが、糖尿病患者96名では検出されなかった(p=0.029)。これらの多型を含むハプログループB4cは肥満しやすい個体を代表している可能性がある。一方、8684C>T(ATP6:T53I)多型は糖尿病患者96名中の5名で検出されたが、若年肥満者96名では検出されなかった。この多型の糖尿病患者における頻度(5.2%)は健常人での頻度(0.7%,3/410)よりも有意に高かった(p=0.008)。糖尿病群における頻度(5.2%,5/96)は、他の4群での頻度(1.3%,5/384;百寿者0/96,アルツハイマー病患者1/96,若年非肥満者2/96,パーキンソン病患者2/96)よりも有意に高かった。このことから、ハプログループM8aを代表する8684C>T多型を有する個体は、若年では肥満傾向を有しないが、中年以降に糖尿病に罹患しやすいと推定される。このようにハプログループ間においてミトコンドリア機能の相違が存在し、肥満や糖尿病への易罹患性に関与していると考えられる。
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