研究概要 |
本研究では、ミトコンドリアゲノム多型と個体のエネルギー産生能力との関連を明らかにするために、肥満者・非肥満者・一般の糖尿病患者・血管病変の顕著な糖尿病患者・百寿者・パーキンソン病患者・アルツハイマー病患者、各96人、およびエリート長距離走選手48人、合計720人のミトコンドリアゲノム全塩基配列を決定した。これに基づいてミトコンドリア多型データベースを構築し、分子系統学的解析を行った。蛍光ビーズを用いてミトコンドリアゲノム多型を網羅的に分析するシステムを開発した。これを用いて、生活習慣病患者を中心に2,908例について166種のミトコンドリアゲノム多型の分析を終えた。その結果、女性ではメタボリックシンドロームに罹りにくい3種のハプログループ(N9a,G1,D5)が見いだされた。一方、糖尿病発症の危険因子となるF型と防御因子となるN9a型が見いだされた。男性ではハプログループFが糖尿病発症の危険因子であること、女性ではハプログループN9aが糖尿病に対する防御因子であり、ハプログループFとAが糖尿病の危険因子であることが明らかになった。さらにハプログループNgbとM7cは心筋梗塞の防御因子であり、ハプログループG1は危険因子であった。男性ではハプログループN9bが心筋梗塞の防御因子でありハプログループG1が危険因子であった。このように本研究によって肥満など生活習慣病に関連する多数のミトコンドリアゲノム多型が発見された。
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