研究課題/領域番号 |
15200058
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
富田 正弘 富山大学, 人文学部, 教授 (50227625)
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研究分担者 |
永村 眞 日本女子大学, 文学部, 教授 (40107470)
綾村 宏 奈良文化財研究所, 文化遺産研究部, 部長 (20000507)
水本 邦彦 京都府立大学, 文学部, 教授 (60108363)
大藤 修 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20110075)
藤井 譲治 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40093306)
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キーワード | 紙素材文化財(文書・典籍・聖教・絵図) / 室町期の料紙 / 大徳寺文書 / 東寺百合文書 / 東大寺文書 / 檀紙の衰退 / 杉原紙の多様化 / 添加物としての米粉 |
研究概要 |
本研究は、年紀不記載の紙素材文化財(文書・典籍・聖教・絵図)の年代測定を、料紙を観察することによって行う方法を探求することにある。特に、中世の料紙と近世の料紙との系譜的な繋がりを解明するため、中世班と近世班との、お文化財班との合同の打合せと調査を行った。打合せは、6月に富山大学、8月に長野県白馬村での2回行い、調査方針の確認を行った。調査は、9月に東京大学で大徳寺文書、京都府立総合資料館所蔵の東寺百合文書を、10月に京都府立総合資料館所蔵の東寺百合文書を、11月に東京大学で大徳寺文書を、12月に東大寺図書館所蔵の東大寺文書、大津市石山寺所蔵の石山寺聖教を、1月に神戸大学所蔵の中川家文書を、2月には米沢市上杉博物館所蔵の上杉家文書を対象に行った。その結果、総計約4,000件程の文書・聖教の料紙データを採取することができた。調査に当たっては、従来からの道具として、マイクロスコープ・シックネスゲージやライテングブックのほか、新たにデジタルマイクロスコープ・デジタルカメラや角筆スコープを用いて調査を行ったため、従来できなかった料紙繊維以外の成分の識別が可能となり、非繊維物質と添加物としての米粉とが判別できるようになった。その結果、南北朝・室町期に文書・聖教の料紙の主流となった杉原紙は、従来から添加物として米粉をいれる紙であったこと、室町期にさらに大量に米粉を入れるようになり、多様な杉原紙が造られるようになっていくことが分かった。室町期の料紙は、檀紙の衰退・杉原紙の多様化として特長づけられると言えるようである。今後は、これら多様な杉原紙群が桃山期の豊臣秀吉の朱印状や江戸期の大高檀紙や奉書紙に繋がっていくのかを解明していきたいと思っている。そのために、富山大学でコンピュータ入力した約4.000件程の文書・聖教の料紙データを更に検討するとともに、今後は、今年調査に掛かれなかった東寺所蔵観智院金剛蔵聖教および彦根市博物館所蔵井伊家文書の調査に取り組んでいきたい。
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