研究課題/領域番号 |
15201001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
門谷 茂 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 教授 (30136288)
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研究分担者 |
工藤 勲 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 助教授 (00195455)
多田 邦尚 香川大学, 農学部, 教授 (80207042)
柳 哲雄 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70036490)
堤 裕昭 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (50197737)
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キーワード | 干潟 / 親生物元素 / クロロフィルa / 底生珪藻 / 二枚貝 / 安定同位体比 / 沈降粒子 / 堆積物 |
研究概要 |
調査海域である火散布沼内の基礎生産者の現存量を水柱と表層堆積物に分けて定量化した結果、水柱の植物プランクトン態Chla量は、周年に渡って数mg/m2程度であった。一方、表層(0-0.5cm)堆積物中の底生微細藻類由来のChla量は、数十から百数十mg/m2にも達しており、底生微細藻類が主要な基礎生産者であることが明らかとなった。当該干潟域には、大型海藻類やアマモが大量に繁茂しており、これらの生産物から生起する食物網についても精査する必要がある。昨年度と同様に、流向・流速計による観測では、干潮の最強流時に、堆積物粒子が大量に再懸濁している様子が捉えられた。その影響は、3〜4時間継続していた。この再懸濁時に表層堆積物粒子とともに底生微細藻類も水中に舞い上がり、Chla濃度が数十倍に増加していた。 安定同位体比を用いた系内の食物網解析では、3つの異なるタイプの基礎生産者(底生微細藻類・大型海藻類・アマモ)から派生する食物連鎖系が共存していることが明らかになった。さらに、多くの底生大型動物は前2者の混合物を利用している可能性が示唆された。これらのことは、懸濁粒子や沈降粒子あるいは表層堆積物の安定同位体分析でも矛盾無く説明できた。 沼内の2定点において、漸位が著しく変化する時間帯で15分毎に採水する時系列観測を行ったところ、クロロフィル濃度は、表層・底層とも数倍から十数倍変化していることが明らかとなった。また同時にバクテリアの現存量も粒径が小さな粒子が舞い上がる時間帯に増加することから、粒子の表面積に依存しており水中の現存量は潮位変化に同調していることが分かった。 小型底生動物(とりわけ線虫類)の分布は、極めて変化に富んでおり、堆積物の環境影響を強く受けている事が明らかになった。このことは線虫類などのメイオベントスが堆積物の環境指標者として利用できることを示唆している。
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