清浄な海洋大気がサンプリングされると期待できる北海道利尻島の国設酸性雨モニタリングステーションで、平成15年9月に大気の集中観測を行った。観測項目は、レーザー誘起蛍光(LIF)法によるOH、HO2ラジカル濃度測定、化学増幅LIF検出によるRO2濃度測定、太陽放射強度、陽子移動反応型炭化水素濃度分析装置(PTR-MS)による揮発性有機化合物(VOC)の高速サンプリング、キャニスターサンプリング/GC-MSによるDMSおよびその他のハロカーボン、オゾンおよび一酸化炭素の測定を一ヶ月に渡り行った。 OHラジカル濃度の変動は太陽紫外線の強度変化と良く追随しており、OHラジカルの生成過程は主にオゾンの太陽紫外線による光分解による励起酸素原子と水蒸気の反応過程であることが示された。HO2ラジカルはおおむねOHラジカルと同様の濃度変動を示すが、夜間でもその存在量が有意な値を示した。夜間のHOx(OH&HO2)ラジカルの生成プロセスに関して興味深い知見が得られた。オゾンと不飽和炭化水素の反応が重要であると考えられる。 NO2の光分解速度、オゾン濃度、NO2、NO濃度およびRO2濃度の間の関係について検討を行った。これらの化合物と太陽紫外線の間に光化学平衡が成り立つかどうかの検証を行った。興味深いことに平衡が成り立つ日とそうでない日が明確に区別された。気象データ解析から光化学平衡の成り立つ場合の風向きが西側の海風の場合である、成り立たない場合は東側の陸風であることが明らかとなり、現在なぜ風向きにより変化するかについての検討を行っている。
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