研究課題
基盤研究(A)
DNAマイクロアレイは多くの遺伝子変動を短時間でスクリーニングできる有効なツールである。しかし、塩基配列の違いから幅広い生物種間に応用することは極めて難しく、この手技を様々な階層の野生生物に用いる為には、各々の生物特有のアレイの開発が必要である。そこで、より簡便に広範囲の野生生物に対応する次世代環境影響評価システムを開発することを目的として基礎的研究を行った。これまでに、マイクロアレイ法で野生動物を用いた研究報告はほとんどない。野生動物では、系統差や複合汚染の影響、生理的条件の差により、通常の実験動物や細胞を用いた網羅的解析が難しいことが考えられる。そこで、野生げっ歯類を捕獲し、体内に蓄積している汚染物質を同定し、濃度を調べ、それらの動物への影響を既存のマイクロアレイを用いた解析が可能かどうかについて検討し、解析方法として、マイクロアレイ法が有効であることを報告した。また、ヒトのサンプルを用いて、マイクロアレイを作成し、従来の各遺伝子の解析とマイクロアレイ法について、比較検討した。さらに、簡便な生態影響評価用DNAマイクロアレイの開発のために、アレイ上にのせるべきDNAを検討し、ダイオキシン類など、残留性有機汚染物質の汚染亢進域で捕獲したネズミから、肝臓で変動の大きいバイオマーカーとなり得る遺伝子群を抽出した。また、広範囲の野生動物の試料を採集し、異物代謝酵素を中心にその塩基配列や基質特異性などを同定した。100種類以上の野生動物や動物園飼育動物のサンプルを採集し、これまでに報告のない動物種を中心に解析を進め、そのホモロジーから、マイクロアレイでの解析がどの動物種間で可能か検討した。さらに、生体機能を利用した生体影響スクリーニング用アレイ開発の為に、受容体への環境化学物質の結合および受容体活性化を利用したスクリーニングを検討した。環境汚染物質の中でも発がん性を持つ化学物質の受容体となるAhR(arylhydrocarbon receptor)と生体内の各核内受容体のクロストークを検討した。
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