研究課題/領域番号 |
15201013
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
法村 俊之 産業医科大学, 医学部, 教授 (20039530)
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研究分担者 |
大津山 彰 産業医科大学, 医学部, 助教授 (10194218)
加藤 文雄 産業医科大学, 医学部, 講師 (20309959)
藤川 和男 近畿大学, 理工学部, 教授 (90247958)
欅田 尚樹 産業医科大学, 産業保健学部, 助教授 (90178020)
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キーワード | p53遺伝子 / 突然変異 / アポトーシス / 組織修復 / 放射線 / 線量率 / ゲノム不安定性 |
研究概要 |
p53遺伝子正常p53(+/+)、ヘテロp53(+/-)及び欠損p53(-/-)マウスを用いて、低線量率放射線照射による障害の蓄積の有無をマウス脾細胞における放射線誘発TCR突然変異頻度、アポトーシス活性、遅延性突然変異誘発等を指標に解析し、生体が備えもつ低レベルゲノム損傷に対する防御機構の解明を目指した。 (1)放射線誘発突然変異に対するp53依存性監視機構 p53(+/+)マウスでは、γ線を高線量率(61Gy/h)で照射した場合、TCR変異頻度は有意に高くなるが、線量率を0.07Gy/hに下げると変異誘発率はゼロに近づく。しかし、アポトーシス活性を欠くp53(-/-)マウスでは、線量率を0.07Gy/hに下げても変異誘発率はゼロに近づかない。また、染色体着色法(FISH)により解析した#2、11及び12番染色体の転座を指標とした場合においても、p53(-/-)マウスはp53(+/+)マウスに比し有意に高い転座誘発頻度を示した。これらの結果は、p53依存性アポトーシスを介した組織修復がDNA修復とうまく協調して働けば、低線量(率)放射線による少々の遺伝子損傷は効率的に排除され、その蓄積は起こらないことを不している。 (2)遅延体細胞突然変異誘発におけるp53の役割 P53(+/+)マウスを高線量率照射した場合、8〜10日後にTCR変異頻度は最大となり、以後速やかに減少し1ヶ月後には自然発生レベルに戻る。その後、52週齢(1年)頃までTCR変異頻度は自然発生レベルを維持しているが、60週齢以降加齢に伴う再上昇がみられ、その傾向は若年時に3Gy照射したマウスで顕著であった。一方、p53(+/-)マウスの3Gy照射群では40週齢の早期よりTCR変異頻度が再上昇し、遅延性突然変異誘発においてもp53遺伝子の関与が示唆された。事実、TCR変異頻度の再上昇がみられた週齢での放射線誘発アポトーシス活性は、若年時被曝によりp53(+/+)及びp53(+/-)マウスともに低下していた。
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