研究課題
基盤研究(A)
ダイオキシン類として行政的に規制をされている物質群は、ダイオキシン、ジベンゾフラン、平面構造を有するPCB(いわゆるコプラナーPCB)である。その理由は、これらの化学物質が、ダイオキシン異性体の中でもっとも毒性が強い2,3,7,8-TCDD(以下、TCDDと略す)がアリール炭化水素受容体(AhR)を介して示す毒性と同じ毒性を表わすことが前提となっている。しかし、環境から同時に曝露するこれらの化合物および非コプラナーPCBの複合曝露による影響と毒性メカニズムはほとんど解明されていない。そこで本研究は、実験動物に対してTCDDとPCBの複合曝露を行い、複合曝露に伴うAhR依存性と非依存性に現れる毒性の量・反応関係を明らかにし、遺伝子プロファイル解析により毒性発現メカニズムの分子基盤に関わる情報を提示することを目的として行った。研究成果として、第一に、極めて低用量のTCDD単独曝露(妊娠15日目の母動物に50ng/kgを単回経口投与)により有意な学習行動低下があること、第二に、TEQ等等価量のPCB126においても同様に50ngTEQ/kg(500ng/kg)により低下することを明らかにした。第三に、PCB153単独曝露(妊娠15日目の母動物に2mg/kgを単回経口投与)を受けた仔ラットでは、学習行動の学習習得に顕著な障害が認められること、第四に、ダイオキシンとPCB153の複合曝露により学習機能が低下することを明らかにした。第五に、複合曝露実験では、学習行動試験を行った仔動物と同腹の別の仔動物を用いて、DNAマイクロアレイによる遺伝子の網羅的解析とプロファイル解析を行い、Folate receptor 1ならびにProstaglandin D2 synthaseは、それぞれダイオキシン単独曝露とダイオキシン・PCB複合曝露のマーカーとなる可能性が示唆された。
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