研究概要 |
1.1マイクロメータ近くの長さを持つπ共役ポルフィリンワイヤを合成し、グラファイト基板上での自己集合の様相を研究したところ、分子の長さや溶液の濃度により多様な自己組織化を示すことが明らかとなった。基板上の溶液の濃度が比較的希薄な場合には、分子は1層に並び、その分子鎖間距離は約5nm、分子の高さは0.5nm程度であった。濃度が高くなると分子の長さにより自己組織化の様式が変わり、分子の長さが200-440nmの場合には鎖間距離が約10nmで分子の高さが0.5nmの集合体が出来るが、分子の長さが60-100nmの場合には鎖間距離が15nmで高さが1.0nmの集合体が出来た。濃度が高く分子鎖が比較的短い場合には、おそらく2〜3本の分子鎖が絡んで出来た分子束が自己集合している物と思われる。濃度がたたく分子鎖が比較的短い場合には、1本の分子鎖が多層構造を作っているものと考えら得る。 2,ポルフィリンに8本の長鎖アルキル基を導入し、その末端にジスルフィドを付けた分子を合成した。この化合物と、3級のアルキルチオールで保護した金ナノ粒子を混合し、その組織化の様子を種々のスペクトロスコピー、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡で観察した。混合して出来た複合体の吸収スペクトルを見ると、元のポルフィリンのソーレー帯よりも15nm長波長にシフトしていた。金ナノ粒子にアルキル鎖でポルフィリンを結合した複合体は既に報告があるが、この場合には2nm短波長にシフトしている。このことは、ポルフィリンと金ナノ粒子の相互作用が大きいこと、おそらくポルフィリンのπ平面が金ナノ粒子に面する形になっていることを示唆している物と考えている。
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