研究概要 |
磁性金属薄膜・ワイヤ・クラスターはそれ自身の物性に大変興味がもたれているが、本研究ではこれらの金属表面に原子分子を吸着させるなどしてその磁性体の磁気的性質を劇的に変化させ、物性を制御することを目的としている。まず、昨年度納入されたチタンサファイアレーザーを用いた超高真空中での磁化誘起第二高調波発生法(magnetization induced second harmonics generation, MSHG)の立上げを行った。MSHG法は原理的に極めて高い表面界面敏感性を示す手法であり、これによる磁性評価は表面界面磁性に着目する本研究には最適である。予定よりやや遅れたものの夏に立上げが終了し、秋から性能評価と実際の測定を行った。面内のスピン再配列転移を示すAg/Co/Cu(1 1 17)系のMSHG測定を系統的に行い、通常の磁気光学Kerr効果(MOKE)では観測できない磁化反転過程を観測できた。 一方、昨年度立上げが完了したX線磁気円二色性(XMCD)測定システムを用いて、Cu/Ni/Cu(001)およびCu/Ni/O/Cu(001)系のXMCD測定を行い、酸素の存在による磁気特性の大きな相違に関して考察した。低速電子線回折・Auger電子分光・MOKEなどの結果を併せたこの研究成果は既にPhys.Rev.Bに投稿し現在印刷中である。また、Co/Cu(1 1 17)にAg, NOを吸着させた系のMOKE, XMCD測定を行った。NO吸着による非常に顕著な磁気特性変化を観測した。その他、Fe/Cu(001)およびFe/Ag(001)系でのK吸着、Cu/Ni/C/Cu(001)系のC存在の効果なども検討した。
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