研究分担者 |
上山 憲一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80093376)
望月 正雄 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 特任助手 (20379085)
中沢 隆 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (30175492)
小田 和明 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (80094829)
綱沢 進 島津製作所, 分析計測事業部ライフサイエンス研究所, 部長(研究職)
|
研究概要 |
ビス(ターピリジン)ルテニウム(II)錯体型エドマン試薬,N末端標識試薬を開発し,N端アミノ酸配列法を確立した。金属錯体部分は,以下に示す特長を有するためMALDI-TOF-MSなどの質量分析において極めて高感度な検出が可能となった。1)酸,塩基,熱,光,酵素処理に対し安定,2)カチオン性錯体のためイオン化されやすい,3)特徴的な同位体パターンにより,ノイズとの識別が容易,4)分子量が大きいためマトリックスなどの來雑イオンと区別されやすい。この新規エドマン試薬をもちいて,高度好熱菌であるThermus thermophilus HB8の[7Fe-8S]フェレドキシンのN端アミノ酸配列決定に成功した。N端標識試薬を用いた場合はMALDI-TOF-MSのPSD(post source decay)によるMS/MS解析に於いてN端フラグメントであるa_n系列が選択的に強調されて検出でき,12残基のペプチドやユビキチンなどの蛋白質のN端アミノ酸配列の決定に成功した。感度も10fmol程度でも可能で,2次元電気泳動で検出される蛋白質量に対応し,実用的にも十分であると言える。 蛋白質のN端フラグメントを選択的に回収する方法を確立した。具体的には蛋白質中のシステインを還元アルキル化し,リジン側鎖をグアニジル化により保護した後,ビオチニルシステイン酸をN端に縮合させる。トリプシン消化した後,アビジンで修飾した樹脂によりビオチンで修飾されたN端を吸着させることで選択的に回収する。MALDI-TOFのPSDによる解析ではN端にあるシステイン酸のスルホニル基によりy系列フラグメントが選択的に検出されde novoによるアミノ酸配列決定が容易である。 一方,ペプチドのC端をオキサゾロン化により活性化しカチオン性のCys-Argで修飾することでC端フラグメントの感度を選択的に向上させ高感度で検出する方法も開発した。
|