研究課題/領域番号 |
15202004
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
美学・美術史
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西野 嘉章 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (20172679)
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研究分担者 |
諏訪 元 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (50206596)
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 助手 (10272527)
丑野 毅 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (80143329)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2006
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キーワード | 文化財科学 / 年代測定 / 美術史 / 放射性炭素 / 物性研究 |
研究概要 |
木質、繊維、有機溶剤、金属を対象に、祭壇画他から78点の試料を採取し、C14年代決定を行った。年記作については概ね妥当な数値を得たが、様式や図像の分析から年代が推定されている作品では20-50年幅で年代を下げるべき事例が多く見つかった。顔料、金箔など37点の試料を採取し元素組成を解析した。現行の基本色20点、金箔4点の元素組成をマスターシート化した。また色温度計も併用し、簡便な顔料特定法の開発に努めている。古い時代の本金、同時代のニセ金、後代のニセ金の組成データを解析し、加筆、修復など、後代の変更箇所を明らかにした。デジタルマイクロスコープによる微細観察と画像撮影は、試料を採取したすべての箇所について行った。このデータは、作品表面と層構造の解析に役立てられた。また、西洋古紙84点の微細撮影を行い、総件数252点の画像データベースを作成した。圧痕解析法を『燃える柴の三連祭壇画』に適用し、腕部の曲がった両刃の道具で木地成形がなされたことを究明した。デジタルマイクロスコープによる赤外線撮影を上記祭壇画に適用し、下絵の存在、構図改変の事実を明らかにした。上記祭壇画については、以下の事実を究明した。船舶用材に最適なオーヌ材が用いられ、木組みは同時代の模範となる。本体には制作に先立つこと5-10年前に伐採された新材が、天蓋部については100年程前に伐採された古材が用いられている。下地に石灰が用いられ、顔料については、青がドイツ青、赤が水銀朱系と鉛丹系の2種、金については本金が使われている。1852年の修復で、本体の補強、額縁のスタイルの大幅な改変とニセ金泥の上塗り、画面の洗浄と加筆、天蓋部の大幅な補修がなされている。驚くべき繊細な筆致で描き込まれた細部、盛期フランドル派特有の衣襞表現を暗示する下絵、図像の改変の痕跡が発見され、制作者ニコラ・フロマンがフランドル派に、これまで考えられてきた以上に、近い画家であることがわかった。
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