研究課題
基盤研究(A)
ガバナンスの理論的実証的研究は国家統治の正当性と実効性という伝統的な要件のほかに、公開性と説明責任制を前面に押し出す。本研究では両方を考察の対象とした。正当性については政治制度に対する信頼に焦点を当てて分析した。政治制度が市民の信頼を得れば正当性ありとする考え方と逆に政治制度にむしろ一定の距離をおき、批判的な目を向けるのが通常なりとする考え方がある。前者の考えでは政治制度信頼が高ければ民主主義が根付いているとする。後者の考えでは政治制度信頼が低いからといって民主主義が根付いていないと言うのではなく、むしろ政治制度に批判的なことが民主主義の成熟を意味する。「アジア・ヨーロッパ世論調査(2000年)」と「アジア・バロメーター(2003年)」のデータ分析は後者の議論をより強く支持する。批判的なことと冷笑的なことをしっかりと区別できる限り、公開性と説明責任制への要求が強まれば強まるほど、後者の議論は強くなる。グローバル・ガバナンスの研究では世界政府が存在しないときに、どこまで実効的なガバナンスの構築に日本が寄与できるかという問題に焦点を当てた。とりわけ同じような境遇を持ったドイツとの比較研究を通じて、安全保障、世界経済、国際組織、平和構築、地球環境などの問題に対処できるかを分析した。市民大国から次第に普通大国へと転換しつつある日独のグローバル・ガバナンスへの寄与は増大することが確実である。(イラク戦争をきっかけにした米欧亀裂が一定の損傷を少なくとも短期間はもたらすようである。)9・11以後の世界政治における米国の一極主義と反米主義の高まりを考慮に入れなくては、グローバル・ガバナンスをしっかりと分析できない。米国のアフガン戦争に対する世界の支持はどのような要因によるものかを「ギャラップ世論調査」を基に分析した。同盟、貿易、宗教、民主主義などでの米国との距離が一定の影響を及ぼしていることが明らかになった。
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Journal of Conflict Resolution Nov/Dec(発表予定)
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Forthcoming from Journal of Conflict Resolution, Nov/Dec
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