研究課題
為替レートの変動の理論的・実証的研究において、今年度は、つぎの四種類の研究成果があがった。(1)円ドルレートのマイクロ・ストラクチャーに関する研究。(2)日本の通貨当局による為替介入の研究。(3)アジア通貨の危機の伝播の研究。(4)国際金融の諸問題についての展望と今後の研究課題の指摘、である。(1)については、昨年度に引き続き、電子ブローカーのコンピューター記録を分析して、一日の中の取引パターンの特徴を分析した。一日のなかでは活発な活動が行われる時間帯が3つあることを昨年度は発見した。それが、東京市場の開始直後、東京市場の終わりとロンドン市場の開始のオーバーラップ、ロンドン市場の午後とニューヨーク市場の午前のオーバーラップであるが、オーバーラップの時間帯での取引が盛んになることについて、異質の取引者が集まることによる、という理論を提示した。(2)日本の通貨当局は、2003年1月から2004年3月まで、累計で、35兆円という巨額の介入を行った。この介入がなぜ行われたかについて、マクロ経済が停滞する中で行われたこと、円を買う投機ポジションに対抗するために行われていたこと、などを明らかにした。(3)アジア通貨と株価の相互依存関係についても、危機の伝播の観点から分析した。通貨危機から株式価格の急落へつながるケースと、株価急落から通貨の下落につながるケースの両方があること、自国のみではなく、アジア全体に影響を持つ通貨、あるいは株価もあることが発見された。(4)については、為替の変化が国内の価格に与える影響(パス・スルー)について、アジア通貨危機以降のアジアの国について計測、インドネシアが他の国と違い、為替減価が国内通貨下落につながっていたことを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)
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