研究概要 |
本年度は,研究分担者の作間が中心となり,「無償労働の範囲に関する新たな国際標準の構築」を主要課題として理論的研究に取り組んだ。無償労働の理論的研究については、すでに作間による重要な研究成果が数編ある。そこで,これらを出発点として,欧米の各種事例に関する比較検討と更なる理論的考察を行うことによって,無償労働の範囲に関する国際標準の原案を作成するとともに,無償労働評価の基礎データとなるわが国の生活時間調査統計の改善案を作成した。 その際,有吉は,分担課題として,SNA統計と整合的な無償労働サテライト勘定の基本フレームワーク案を構築するとともに,無償労働サテライト勘定の観点から,SNAと整合的な無償労働の範囲の考察と基礎データ改善案の検討を行った。また,斎藤は,分担課題として国内3箇所で無償労働を交換対象とする地域通貨の調査を行い,次年度以降における実証分析のための準備を行うとともに,地域調査とジェンダーの観点から無償労働の範囲に関する考察を行った。なお,今年度調査を行った国内3箇所の地域通貨活動は,いずれも次年度に予定しているオーストラリアの地域通貨と密接な関連をもっており,次年度の海外調査のための予備的研究も併せて行うことが出来た。一方,市岡と牧野は,分担課題として育児・介護関連の福祉政策が市場経済や有償・無償の各種労働に与える影響などを分析するSAM乗数モデルやCGEモデルの構築に取り組み,その第一次案を作成するとともに,政策分析モデル構築の観点から,無償労働の範囲や基礎データの改善案について検討を行った。
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