研究概要 |
本年度は「無償労働の範囲に関する新たな国際標準案の構築と,それに準拠したデータ編纂およびサテライト勘定の構築」を主要課題として取り組んだ。 まず,無償労働に関する国際標準案の構築については,昨年度作成した原案について、国際所得国富学会はじめ国内外の学会等で意見聴取し,その整理・検討を行った。 また,国際標準案に準拠した無償労働データの編纂については,生活時間調査をはじめとする既存の各種関連統計の精査を行った。また、昨年度に国内数箇所で行った地域通貨による無償労働評価に関する調査に加えて,今年度新たに豪州のマレーニーで詳細な地域通貨に関する調査を行い,地域通貨が住民の無償労働を社会的に評価し彼らに経済力を与えていることや、地域通貨が男女の相互理解と無償・有償労働の調和をもたらす役割を果たしていることなど、無償労働評価に関する重要な知見を得ることが出来た。 サテライト勘定の構築については、これまで作成してきた68SNAベースのものをアップデートし、93SNAベースに切り替えた。その際、所得支出勘定の多段階化、可能な限り詳細な資金循環の表示、ストック情報の行列上への計上につとめた。その結果、CGE分析の基本データとなる日本経済の鳥瞰図が描けた。 さらに、こうしたデータを用いて、NPI(非営利団体)における有償労働、無償労働の関係が日本経済にもたらす影響をCGEモデルにより分析した。無償労働は家計においてはもちろん、ボランティアの形でNPIにおいても見られる。今年度はそれをモデル化し、結果として有償労働と無償労働の代替の弾力性が高いほど、無償労働の増加が一般的有償労働の賃金率低下をもたらすなど、影響力が強まるとの知見を得た。
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