研究分担者 |
太田 雅人 埼玉大学, 理学部, 助教授 (00291394)
高木 泉 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40154744)
小薗 英雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00195728)
中西 賢次 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 助教授 (40322200)
水町 徹 横浜市立大学, 理学部, 助教授 (60315827)
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研究概要 |
今年度,高岡と堤は,周期境界条件の下で修正KdV方程式(modified Korteweg-de Vries equation)の初期値問題に対し,時間局所的適切性を研究した.2乗可積分なSobolev空間の関数の滑らかさを表す指数sに対し,s≧1/2のとき時間局所的に適切となることはBourgainによって,1993年に証明されていた.Bourgainはさらに,初期値に解を対応させる解作用素は,解析的であることも示した.一方昨年度高岡と堤は,1/2>s>3/8のとき,時間局所的に適切となることを証明したが,今年度はその関数空間において解作用素が一様連続にはならないことを示した.また,一様連続性を壊す原因が,非線形相互作用から生じる解の振動因子であることを解析し,一様連続性崩壊のメカニズムを明らかにした.解作用素の一様連続性は,解の近似を考える際に重要な概念であり,数値シミュレーションを理論的に補強する際にも役立つ概念である. 他方中西は,相対論的粒子の運動を記述する方程式である非線形Klein-Gordon方程式および非線形Dirac方程式が,光速をパラメータとして無限大にしたとき,非相対論的粒子の運動を記述する非線形Schrodinger方程式にどのように近づくかを研究した.この問題は,特異摂動問題であり,パラメータを無限大にしたときの非相対論的極限では,初期層(initial layer)とよばれる特異性が発生する.この初期層の特徴付けを与えた.また,この研究の過程で,Maxwell-Dirac方程式系の初期値問題に対し,エネルギークラスにおける時間局所的解の一意存在定理を証明することに成功した.この問題は,場の古典論に現れる波動方程式の数学的研究の分野において,長い間未解決であった問題の一つであり,大きな進展であるといえる.
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