研究概要 |
平成15年度に行った,格子間隔a=0.1fm,20^3x40格子のグルオン配位生成に続き,a=0.12fm,16^3x32格子及びa=0.071fm,28^3x56格子でのシミュレーションを本格的に進めた. (1)配位生成. a=0.12fm,16^3x32格子については年度前半で,クォーク質量10パラメータに対して各8000トラジェクトリの配位生成が終了した.a=0.071fm,28^3x56格子の計算は,現在約2500トラジェクトリまで進んでおり,平成17年度に引き続き継続をして5000トラジェクトリを生成する予定である. (2)ハドロン質量結果. a=0.1fm及び0.12fmのハドロン質量について多項式外挿による物理結果の抽出を行い,さらに,これらを理論的に予想されるa^2の振る舞いで連続極限に外挿した.中間子の質量スペクトルの微細構造について,実験値と1%水準での一致の確認が得られる見込みが得られた. (3)クォーク質量結果. 上記解析により,同時にup, dwon, strangeの3種類の軽いクォークの質量が決定される.その結果,連続極限においても,up, downクォーク質量の平均値は約3.5MeV,またstrangeクォーク質量は約90MeVとなり,現象論的に用いられてきた値の約2/3であることが確かとなってきている. (4)重いクォークの扱い 相対論的な重いクォークの定式化をNf=0及びNf=2の配位に適用して,チャーム及びボトムクォークを含む中間子の質量及び崩壊定数の計算を行った.その結果,チャームについてはNf=2の場合に動的クォークの効果が質量の微細構造に良く認められた.また,1/a=2-3GeV付近でのボトムクォーク計算について,格子間隔と重いクォーク質量に起因する系統誤差が良く抑えられていることが判明し,本方式によりボトムクォーク諸量を取り扱える見込みがついた. (5)成果発表及び平成17年度 以上の成果は,2004年度格子上場の理論国際会議や,ドイツ,イギリス,我が国等で行われた国際会議,ワークショップ等で多数回発表された.平成17年度には,28^3x56格子での配位生成と同時に物理量の測定に努力を注ぎ,物理結果取り纏めを急ぐ方針である.
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