研究課題
基盤研究(A)
2009年実験開始が予定されている大強度陽子加速器とスーパーカミオカンデを用いたニュートリノ振動実験のための前置検出器の検討を進めた。特に、基本デザインに基づいて、検出器と一体化している実験施設のデザインの最適化を行った。この実験では、未だ未発見の電子ニュートリノとタウニュートリノ間の有限な混合角の発見(これはミューニュートリノ中に電子ニュートリノが現れる現象として観測される)と、ミューニュートリノとタウニュートリノ間の混合角と質量(の2乗の差)の精密測定を行う。このため、前置検出器にはニュートリノ振動が起こる前のミューニュートリノスペクトルの精密測定と、電子ニュートリノ測定のバックグラウンドがスーパーカミオカンデと同じであることが求められる。このため、前置検出器の中心装置となる水チェレンコフ装置の基本性能を現存するK2K実験の水チェレンコフ測定器のシミュレーションプログラムと解析プログラムをもとに詳細に検討し、1000トンの全体積で、直径50cmの光電子増倍管を1平方メートルに2個用いた検出器は基本的にスーパーカミオカンデと同じだけの、電子ニュートリノ測定のバックグラウンドしかないこと、また、ニュートリノ振動が起こる前のミューニュートリノスペクトルの測定も十分精度よくできることが判明した。ただし、1000トンの測定器はスーパーカミオカンデに比べればはるかに小さく、高エネルギーミューニュートリノ反応で生成されたミューニュートリノは測定器を突き抜けてしまい、そのエネルギーが測定できない。このため、水チェレンコフ測定器の後方にミューオンの飛程を測定できるカウンターの検討を行い、その基本仕様を決定した。それはおおよそ、8m×8mの断面を持つ鉄板の間に粒子の飛跡を検出するプラスチックカウンターからなる検出器で構成され、全体の厚さは5m程度(鉄板の厚さは約3m)となる。これと平行して、現存するスーパーカミオカンデの大気ニュートリノデータの解析を進めてきた。特に、ニュートリノ振動の確率がサイン関数で変化し、その際最初に振動確率が最大になる距離/エネルギーを初めて決定して、ニュートリノの質量の2乗の差の精密決定を行った。また、未だ未発見の電子ニュートリノとタウニュートリノ間の有限な混合角に関して何らかの兆候が無いかを精力的に調べている。また、K2K実験のデータを用いて、未発見の電子ニュートリノとタウニュートリノ間の有限な混合角に制限を与えた。
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