研究課題
基盤研究(A)
2009年実験開始が予定されている大強度陽子加速器とスーパーカミオカンデを用いたニュートリノ振動実験(T2K実験)のための前置検出器の検討を行った。この実験では、未だ未発見の第3の有限な混合角の発見(これはミューニュートリノ中に電子ニュートリノが現れる現象として観測される)と、ミューニュートリノとタウニュートリノ間の混合角と質量(の2乗の差)の精密測定を行う。このため、前置検出器にはニュートリノ振動が起こる前のミューニュートリノスペクトルの精密測定と、電子ニュートリノ測定のバックグラウンドを精密に求めることが要求される。このため、前置検出器の中心装置となる水チェレンコフ装置の基本性能を詳細なシミュレーションをもとに検討し、最大の性能を発揮するためには、直径20cmの光電子増倍管を28cmおきに約5000本設置した検出器がよいとの結論になった。この測定器ではスーパーカミオカンデと同じ電子ニュートリノ測定のバックグラウンドを与え、電子ニュートリノのバックグラウンドを約7%以内の精度で測定できることが判明した。これは要求される性能を十分満たしている。また、水チェレンコフ測定器では測定できない陽子を測定したり、電子ニュートリノのフラックスをほぼバックグラウンドなしで測定するなど水チェレンコフ測定器の性能を補う目的で、液体アルゴン測定器の可能性の検討をヨーロッパやアメリカのグループと共に行い、この測定器を設置することで検討し合意した。また、T2K実験の将来の可能性の検討も行った。その結果、もし将来神岡と韓国に測定器が置ければT2K実験はニュートリノ振動実験の最終目的とされている、CP非保存と質量階層性に関して高い性能をもつことが判明した。これと平行して、現存するスーパーカミオカンデの大気ニュートリノデータの解析を進めてきた。特に、天頂角分布を精密に測定して、ニュートリノ間の混合角の精密決定を行った。また、更にミューニュートリノが振動して生成されたタウニュートリノを探し、予想と矛盾しない数のタウニュートリノを観測した。未だ未発見の第3の混合角に関して何らかの兆候が無いかを精力的に調べたが、その証拠は今までのところ見つからず、混合角に制限を与えた。更に現長基線ニュートリノ振動実験での振動解析もおこない、大気ニュートリノの結果と矛盾ない結果が得られた。
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