研究概要 |
今年度の主な成果は以下の2点にまとめられる。 1.リコイル・シャドゥ法の高度化による^<15,17>B,^<16,17,18>Cの励起状態の寿命測定 昨年度開発したリコイル・シャドウ法を高度化し、中性子過剰な^<15,17>B,^<16,17,18>C同位体について、その励起状態の寿命を測定した。旧方法においてはγ線検出器が覆う角度範囲が制限されていたため、γ線角度分布はあるモデルを仮定した理論予想に基づいていた。角度範囲を広げることよって角度分布を実験的に抑えることができ、理論予想の不定性はない。また、統計量も増やし、精度の向上を図った。昨年度明らかとなった^<16>Cの異常なB(E2)を解明するため、^<16>Cの第一励起準位の寿命を再度測定するとともにその周辺核の励起準位の寿命測定も行った。今回取得したデータによって、中性子過剰な炭素同位体の核構造について新たな知見が得られるものと期待している。3月末の物理学会でプレリミナリーな結果を発表し、さらに詳細な解析を続け、まとめの年にあたる来年度には三つの論文を投稿する予定である。 2.陽子非弾性散乱を用いた^<16>Cの中性子物質の集団性の研究 ^<16>Cの異常なB(E2)を受け、集団性に対する中性子物質の寄与を陽子非弾性散乱の断面積測定から導くことを試みた。この結果、中性子物質の寄与は、陽子物質に比べ7倍も大きいことがわかった。さらに従来得られてきたデータと比較しても、^<16>Cの異常性は際立っている。この成果を論文としてまとめ、Physical Review Cに投稿した。
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