研究課題/領域番号 |
15204019
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中西 彊 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40022735)
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研究分担者 |
堀中 博道 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60137239)
高嶋 圭史 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40303664)
小早川 久 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 名誉教授 (50022611)
栗木 雅夫 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助手 (80321537)
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キーワード | ビームエミッタンス / 電子源 / 負の電子親和性表面 / GaAs / 電界放出暗電流 / ピコ秒レーザー / 超高真空 / フォトカソード |
研究概要 |
超低エミッタンス電子ビームの生成には2つの必要条件がある。1)電子がカソードから飛び出すときの初期エミッタンスの最小化と2)電子銃における空間電荷効果によるエミッタンス劣化の阻止である。我々はこのために負の親和性(NEA)表面を持たせたGaAsフォトカソードから取り出した電子ビームを直流高電界電子銃で素早く光速近くまで加速する方式を最有力とみなしてその開発を推進している。この方式の最重要課題はデリケートなNEA表面の保護にあり、それには究極的なレベルのa)超高真空の実現とb)電界放出暗電流の抑制が求められる。 これに関して今年度の進歩は2点ある。a)については、非蒸発性ゲッター(NEG)ポンプの増強によりカソード凋辺の真空度を4×10^<-12>Torrまで改善することができた。これにより残留ガスによる表面劣化は大きく緩和されると予想され現在はその実証実験が進行中である。b)については、電極材料としてモリブデンとチタンからの暗電流の電極間距離依存性データを分析し、暗電流には電界放出のみならずイオンの逆流を介した別の成分があり、カソードとアノードに最適な素材は異なることを明確に認職することができた。この仮説に基づいて、カソードにモリブデン、アノードにチタンを採用した暗電流試験を行い、電極間距離を1mmとしたときの暗電流を100MV/mで1nA以下に抑制できることを実証した。上記2点の成果は、現在は3MV/mに留まっているNEA-GaAsフォトカソードを用いた200keV電子銃よりさらに高いカソード表面電界実現が可能であるという我々の見通しに明るい展望を与えるものである。 今年度はさらに新実験を行うための準備として2点の進展があった。まず、電子源エミッタンスをpepper-pot法で測定するための装置を名古屋大学において完成できた。この装置では0.5πmm・mradのエミッタンスまで測定可能と予想している。また、NEA-GaAsフォトカソード励起用光源として、20ピコ秒幅のレーザーパルスを81.25MHzで生成し、780nmで1Wの光出力を有するModeーLock型Ti:sapphireレーザー装置を入手できた。上記2点は、ERL(Energy Recovery Linac)用の超低エミッタンス電子ビームに近い条件でビームを生成できる装置として、次年度以降の研究進展に大きな役割を果たすはずである。
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