研究課題/領域番号 |
15204030
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物性Ⅱ
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 慎一 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (10114399)
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研究分担者 |
小嶋 健児 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (60302759)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2006
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キーワード | 高温超伝導 / ミクロ不均一性 / 競合する秩序 / 光学応答 / STM / STS / 結晶格子乱れ / 擬ギャップ相 / ジョセフソン・プラズマ |
研究概要 |
Cu酸化物の高温超伝導は反強磁性モット絶縁体への化学ドーピング操作により実現する。ドーピング操作あるいは酸素ノンストイキオメトリーは必然的に高温超伝導体結晶に乱れを導入することになる。この乱れがCuO_2面の電子状態と超伝導特性に与える影響は超伝導の基礎・応用の両面で重要であるが、系統的に調べた研究はこれまでになかった。本研究では、乱れを制御可能な形で導入した高温超伝導体単結晶試料の作製を行い、サブミリ〜赤外の光学スペクトル、走査型トンネル電子顕微分光(STM/STS)、そして角度分解光電子分光など様々なスペクトロスコピーを駆使して、乱れが電子構造、超伝導特性そして光学スペクトルに与える影響を明らかにした。 主な研究成果は、 (1)高温超伝導状態では、性質の異なる2種類の準粒子が存在する。ノード準粒子は乱れの影響は本質的に小さく、長い寿命を保つため量子力学干渉を起こし、電子状態密度の周期的変調を起こすことを示した。一方、アンチノード準粒子は乱れの影響を強く受けてインコヒーレントになり、高温超伝導状態のミクロな不均一性の要因となっていることを明らかにした。 (2)結晶の様々なサイトに存在する乱れのうち、頂点酸素を含む隣接層の乱れがCuO_2面の電子状態に大きな変化をもたらし、臨界温度T_cを減少させていることを示した。CuO_2面では超伝導秩序とは別の秩序が共存・競合しており、この乱れが別の秩序を増強させること、またこの秩序が擬ギャップと密接に関係しており、乱れのために一種の「電子ガラス」状態を形成していることをSTM/STSで観測することに成功した。 (3)アセチノード準粒子はc軸光学応答を支配している。高温超伝導体はジョセフソン接合がc軸方向に積層したジョセフソン超格子とみなせるため、光学応答はジョセフソン・プラズマモードで特徴づけられる。磁場をCuO_2面に平行に印加し、ジョセフソン接合を変調させると新たな光学活性なプラズマモードが現われ、その周波数や強度を磁場の強さで制御できることを示した。
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