研究課題
1.超伝導との共存を示す強磁性体UGe_2の磁性を研究するため、希釈冷凍機で動作するHall素子を用いた手法を開発し、極低温・高圧下での磁化測定を行った。その結果、磁化曲線のステップの数が試料の反磁場係数に関係することを見出した。また、統計的な性質を明らかにするため、1000回以上の測定を繰り返し行った結果、保磁力が磁場の掃引速度にほとんど依存しないことも明らかにした。これらのいずれの観測結果も、我々が提唱している巨視的トンネル効果と矛盾しない。さらに従来の^3Heクライオスタットを用いた磁化測定を行い、広い温度領域における保磁力の温度依存性を測定した結果、20ケルビン以下から1ケルビン程度の低温まで対数的に増大する一方、より低温領域で一定値になることを見出した。これは、巨視的トンネル効果がこのような低温領域で発現することを示唆するものである。2.高圧下でのUGe_2中性子弾性散乱実験を行った。その結果、強磁性状態の相関距離が、実験の精度内で、ほとんど圧力に依存しないことを明らかにした。また、温度を超伝導転移温度以下に冷却しても、同様に、強磁性ブラッグピークには変化が見えなかった。これらから直ちに磁性と超伝導の相関を結論することは難しいが、少なくとも一つの可能性として、それら二つはほとんど独立である。この問題はUGe_2を理解するうえで本質的であり、今後の研究において解明していきたい。3.UNi_2Al_3のドハース・ファンアルフェン効果の角度依存性の測定を行った。この結果を元にしたバンド計算が待たれる。4.URu_2Si_2の温度対圧力相図の全体像を実験的に明らかにした。今後の課題は、各相の秩序パラメータを同定することである。5.さらにSmSについても研究を進めた。これは、高圧下で金属・絶縁体転移を示す典型物質である。30年近い研究の歴史を持つ物質であるが、その本質は未解明である。我々は、高圧下で発現するgolden phaseの電子状態を探るため、熱膨張測定を行った。その結果、この異常な高圧相において、エネルギーギャップが存在することを熱力学的測定により始めて明らかにし、さらにそのギャップの大きさが加圧とともに減少することを見出した。このギャップの物理学的な起因を探ることが次の課題である。
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J.Magn.Magn.Matter 272-276
ページ: e277-e278
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Phys.Rev.B 70
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Proceedings of strongly correlated electron systems, 2004 (印刷中)