研究課題
本年度の研究成果は以下のようである。(1)超伝導を示す磁石UGe_2強磁性と超伝導の共存・競合を示すUGe_2の圧力下ac磁化率の測定を行った。その結果、従来とは質的に異なる超伝導転移温度の圧力依存を見出した。すなわち、最低温度における超伝導反磁性磁化率(超伝導ボリューム・フラクションに相当)は二つの臨界圧力近傍においてピークを形成する。これは、例えば、二つの異なる超伝導領域の存在を示唆するものとも解釈される。(2)反強磁性と超伝導の共存・競合を示すCeRhIn_5重い電子系化合物CeRhIn_5に対し、新しい温度・圧力相図を提唱した。これにより、常圧においても超伝導が出現すること(転移温度は約90mK)、および超伝導と反強磁性が競合的であることを示した。後者は超伝導と反強磁性がフェルミ面上でギャップを競合的に形成していることを示すものであり、従来にはなかった新しい知見である。Ce原子を非磁性のLaで置換した系の単結晶を育成し、その磁化率の温度依存および磁化の磁場依存を測定した。これを結晶場モデルで解析することにより、結晶場基底状態の波動関数、励起エネルギーを同定し、従来の結果とは異なり、基底状態が等方的であることを示した。(3)価数揺動物質SmS高圧下において、比熱、熱膨張、ホール効果、および磁化の測定を行った。その結果、低圧相(black phase)において、ギャップが磁場の関数として減少することを見出した。また、高圧相(golden phase)においては、擬ギャップが形成されていること、ギャップの大きさが圧力の増大とともに小さくなること、フェルミ面上における状態密度が圧力の増大とともに大きくなること、ギャップの大きさとフェルミ面上における状態密度の積が圧力に依存しないことを明らかにした。また、20kbar以上の高圧相が反強磁性状態であることを見出した。(4)高圧下物性測定法の確立上記の測定を可能とするような実験手法を確立し、圧力媒体の特性等を明らかにした。特に、熱膨張測定については、当該分野の代表的研究者であるJ.Flouquet氏(Grenoble)によって高く評価された(2007年3月の日本物理学会招待講演による)。なお、本年度は最終年度であるため、これまでの成果を冊子としてまとめた。
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