研究概要 |
以下に掲げるような研究成果を得た。 1)新しい超伝導体として、W_7Re_<13>X(X=B,C)(T_c=7.1K及び7.3K)、及びY_2C_3(T_c=18K)を発見した。特に後者は、従来超伝導材料として使われているNb_3Snに匹敵する転移温度を示しており、今後の実用化が期待される。なぜこの系でこのように高いT_cを持つのか種々の観点から現在検討中である。 2)新しい強磁性体CaB_6についてμSR法を用いて、磁気モーメントの存在の有無を確かめた。アシンメトリーの測定を詳細に行う事により、Bの核双極子モーメントでは説明のつかない、新しい内場を観測した。この内場は〜150K付近で消失することから150K以下で何らかの電子的な相転移が起こっている可能性がある。 3)MgB_2に関しては基礎物性、応用的観点から総合的に研究を行っている。特に「電気泳動法」という新しい技術を用いて、安価な方法でMgB_2の薄膜を得るめどがついた。 4)MgB_2のトンネル分光実験では異常な強結合ギャップを観測した。また,互いに相関を持つ多重ギャップ構造の存在を明らかにした。その起源を探るためには単結晶を用いたSTMによる測定が必要である。強結合性について系統的に調べるために、同じ結晶構造でT_cの低いNbB_2の測定も行い、超伝導の強結合性や多重ギャップ構造の存在も明らかにした。電子構造の異なる両者で似た特性を示す点に関して現在調べている。MgB_2の超伝導機構を探るための電子フォノン結合スペクトルの観測によると、面内E_2gモードエネルギー付近に再現性の高い構造を観測しており、このモードが超伝導に関与していることを示唆している。単結晶による詳細な測定と解析が急務である。
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