研究課題
本年度は、学術的に重要な堆積システムであるにもかかわらず、理解の進んでいない「潮汐三角州システム」の研究が主目的であった。大阪平野吹田地区に縄文時代に発達した堆積体をターゲットに、3地点でのボーリング掘削を試みた。対象地域が市街地のため、土地使用の許可が難航し、掘削実施が遅れた。掘削は年度末になったが、計画通りオールコア試料を採取することができた。この遅れにより、年代測定の試料採取が計画通り実施できなかった。年代測定は来年度に持ち越される。地層掘削の遅れが判明した時点で、計画の一部を前倒しに行うことにした。また、本年度の夏季に集中した台風の襲来に伴い、三角州前置面での洪水堆積物をジオスライサーで掘削することに成功した。前者は水路実験による堆積過程の解明のための基礎研究で、長時間の安定した流れを作り出せる円形水路と、給砂量をコントロールできる装置の製作である。どちらも新しく設計したオリジナルな装置で、現在、予備実験を開始している。これにより地層形成の基礎実験が半年ほど先行して実施できる。後者の洪水堆積物は、島根県宍道湖に注ぐ斐伊川河口で採取に成功した。この堆積物は貴重なもので、現在、堆積相解析と粒度組成解析を高精度で行っている。この解析結果は河川から湖や海への物質の輸送過程について、新しい情報をもたらすと期待している。昨年度掘削した矢作川三角州の地層については、高精度での地層発達過程の復元に成功した。その結果、最近3000年位に土砂供給量が急激に増加したことが判明した。これは人間活動による森林破壊の結果による?と考えている。堆積作用に対する人間活動の効果を具体的に捉えることができると期待している。
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