研究課題
基盤研究(A)
本研究では初期地球環境を模擬し、そこでのアミノ酸に代表される生体有機分子の生成とアミノ酸の重合を実験室で再現する事を最大の目的としている。アミノ酸に加え核酸も同様の挙動を示すかも課題に含まれている。科研費採択からの3年間、高温高圧電気炉を用いた合成実験、ガスフロー電気炉を用いた合成実験、衝撃波発生装置を用いた海洋衝突シミュレーション実験などを行った。分析に必要な高速液体クロマトグラフや凍結乾燥機は本研究費を用いて整備した。まず衝撃波発生装置や高温反応炉を用いて、初期地球における隕石衝突を模擬した。この実験の目的は、隕石衝突イベントにおいてアミノ酸やアミノ酸材料物質が生成されるか検証する事にある。その結果、アミノ酸材料物質であるアンモニアの生成が高収率で起こる事、そこからアラニン・グリシンなどアミノ酸生成も起こる事を証明した。その成果の一部は国際誌に出版された。様々なエックス線分析装置を駆使し、高温高圧反応で生成した固体物質の同定なども積極的おこない、鉄、マグネシウム、シリカなどの元素が特異的な挙動を示し、アミノ酸生成を起こしている反応場の化学条件をバッファーしている事が世界に先駆けて判明した。さらに地殻内条件を反映させ、アミノ酸を高温高圧環境で重合させペプチド重合を促進させる実験を行った。その結果、今まで報告例のない9量体までアミノ酸の重合が進むこと、硫化鉱物が重合に重要な役割を果たすことが分かった。同時に以前には不明であった圧力の効果、温度の効果が具体化された。この成果は国際学会で発表してきているのと同時に論文として投稿準備中である。これら成果に加えヌクレオチドの熱的安定性、リン酸塩鉱物の影響なども実験的に確かめられた。また、この研究で得られた成果は教科書2冊で取り上げ、教育・社会啓蒙に貢献してきている。
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