研究概要 |
新ガイドブロックと油圧制御システムを取り付けた超高圧発生装置を用いて、以下の成果を挙げた。 1.MgSiO_3-Al_2O_3系及びMgSiO_3-MgAlO_<2.5>系のペロブスカイト固溶体を27GPa、1600℃で合成し、粉末X線回折データを取り、Rietveld解析を行った。その結果、前者ではMg+Si=2Alの置換が起こるが、後者ではこの置換と共に2Si=2Al+Vの置換(Vは酸素欠陥)が起こることが示された。またRietveld解析の結果から、MgSiO_3-MgAlO_<2.5>系ペロブスカイト固溶体では酸素欠陥が無秩序に分布することや、格子定数と(Si,Al)O_68面体の位置の捩れがMgSiO_3-Al_2O_3系ペロブスカイト固溶体とMgSiO_3-MgAlO_<2.5>系ペロブスカイト固溶体では異なることが明らかになった。 2.CaMgSi_2O_6-CaFeSi_2O_6-NaAlSi_2O_6系の高圧相関係を24GPaまで調べ、単斜輝石、ガーネット、Ca-ペロブスカイト、カルシウムフェライト、スティショバイトの相平衡関係を決定した。さらに圧力の増加に伴って、ガーネット中のメジャーライト成分とナトリウムが顕著に増加することが示された。このことから、ガーネット中のNa_2MgSi_5O_<12>成分の固溶量が圧力と共に急に増加することが考えられた。 3.変型スピネル型Mg_2SiO_4及びスピネル型Mg_2SiO_4を15-20GPaで合成し、極低温領域から室温までの熱容量を測定した(東工大の阿竹教授、川路助教授との共同研究)。この結果、Mg_2SiO_4組成では、オリビン、変型スピネル、スピネルの順に熱容量が小さくなることが示され、熱容量から変型スピネル相とスピネル相の標準エントロピーが決定された。またこの標準エントロピーから求まる転移エントロピーと既知の転移エンタルピーとを組み合わせ、オリビン-変型スピネル-スピネル転移の相境界線が計算された。その結果は、その場観察法により正逆反応の高温高圧実験によって決められた相境界線と誤差の範囲で一致することが示された。さらに、ポスト・スピネル転移に関する既存の熱力学データに今回のスピネルの標準エントロピーを組み合わせて相境界線を計算したところ、ポスト・スピネル転移が深さ660kmの圧力下で1900K程度の温度で起こることが確かめられ、660km地震学的不連続面がポスト・スピネル転移に対応するという説の正しさが確認された。 4.CaIrO_3のポスト・ペロブスカイト転移の相関係を5GPaまでの高温高圧実験により決定した。また、転移エンタルピーを高温熱量測定法で測定した。その転移エンタルピーを用いて相境界線を計算した結果、相境界線は40(±20)MPa/Kの強い正の勾配を持ち、高温高圧実験による相境界線とほぼ一致することが示された。CaIrO_3のこの大きな正の勾配は、120GPa付近でのMgSiO_3のポスト・ペロブスカイト転移の相境界線と同様である。
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