当初の研究実施計画に従って、紫外線照射によるメタノール、アセトニトリル、酢酸などの有機化合物の分解時の炭素および水素の同位体分別を明らかにした。炭素・水素ともに有機分子の分解が進行するにつれて、同位体的に重くなることがわかった。有機化合物の種類によって炭素・水素の同位体分別の挙動が異なり、分解時の主に官能基の違いによる様々な分子内および分子間化学反応が同位体変化に影響を及ぼしていることがわかった。 また、有機化合物に含まれる特定部位(カルボキシル基)の炭素同位体比を微量試料で測定するために、従来の元素分析計を改良し、同位体比質量分析計と接続することにより、脱炭酸した分子内カルボキシル基の炭素同位体比を数マイクロモル量で測定することを検討した。この手法を用いて芳香族カルボン酸のカルボキシル基の炭素同位体比を1‰以内の精度で測定できることを明らかにし、炭素質隕石中の不溶性高分子有機物のカルボキシル基量とその炭素同位体比を決定した。隕石不溶性有機物のカルボキシル基は全有機炭素の同位体比に比較して、約7.5-11‰同位体的に重いことが明らかになった。 海外共同研究員であるアメリカ・ネバダ大学リノ校のポールソン教授が日本学術振興会外国人招へい研究員(短期)として、岡山大学の当研究室に2ヶ月間滞在し、共同で紫外線照射分解時における化合物の同位体分別を決定する実験を行った。 研究期間の最終年度にあたり、4年間の研究をまとめるとともに、研究成果報告書を作成した。
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