研究課題/領域番号 |
15205004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中原 勝 京都大学, 化学研究所, 教授 (20025480)
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研究分担者 |
松林 伸幸 京都大学, 化学研究所, 助教授 (20281107)
岡村 恵美子 京都大学, 化学研究所, 助手 (00160705)
若井 千尋 京都大学, 化学研究所, 助手 (40293948)
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キーワード | 拡散定数 / 高分解能NMR / 超臨界水 / イオン / 輸送現象 / 窒化アルミ / 高温高圧 / 電気伝導度 |
研究概要 |
本研究の目的は、高温高圧極端条件にある超臨界水・水溶液の拡散現象を直接観察・解析する方法論を開拓・確立することである。この目的のために、電荷の有無に関わらず、どのような原子核種・化学種に対しても適用可能で、400℃以上の高温でも安定で精密に作動する高温拡散NMRプローブを世界に先駆けて開発した。これまで、超臨界水溶液の輸送現象の系統的な解析は、電気伝導度測定にほぼ限られてきた。しかし、電気伝導度測定は、イオン性の溶質に対してのみ適用可能である。また、超臨界水中では、イオンの会合度が増大するために、高精度の測定・解析は非常に困難であり、分子レベルの知見は得られない。本研究で開発した高温拡散NMRプローブによって、超臨界水溶液の拡散現象の系統的な解析が可能となった。500MHzの高磁場下での測定によって、Debye-Huckel理論の守備範囲であるサブmMのオーダーでの拡散係数決定を行うことができ、また、測定可能な分子種の制限を取り除いた。 本年度は、極低密度の超臨界水の拡散定数を決定した。0.001g/cm^3オーダーの希薄気体領域に踏み込んだ。高温拡散測定としては、もちろん、前人未到である。密度低下とともに、拡散定数が密度に反比例して、増大することを見出した。拡散定数と密度の積は、剛体球モデルから予測される数値より小さく、水分子の引力的相互作用を表すものである。拡散定数と密度の積は、温度上昇とともに増加することが見出され、引力項の強さの温度依存性をダイナミックな立場から定量化することができた。これらの結果は、計算機シミュレーションとの良好な一致を示し、理論・実験の両面から、極低密度超臨界水の拡散ダイナミクスの定量的解析の前進を見た。
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