本年度は(1)双極子ガラスやスピン系などのフラストレートした系の自由エネルギー面を描く基礎理論の調査と、プログラム作成、(2)ガラス状態を再現するポテンシャルを用いた単原子分子のMDシミュレーションのプログラム構築を行った。(1)は自由エネルギー面がダイナミックスにどのように反映するかを調べる本研究の基礎となる重要な過程で、非常に多くの自由度を持ち、強いフラストレーションのために状態が局在化しやすいガラス状態の自由エネルギー面を調べるために、レプリカ交換モンテカルロ法やマルチカノニカル法を用いて状態の探査を行った。その結果レプリカ交換法では自由エネルギー面を書くのに十分な状態探査は出来なかったが、マルチカノニカル法なら可能であることが分かった。ダイナミックについてもモンテカルロ法による初歩的な計算を始めている。(1)はモデル系に関する探査であるが、より現実的な系との比較も理論の信頼性を増す上で重要であり、さらにモデル系でわかった現象を現実的な実験観測量としてフィードバックすることを目指し行っている研究である。単原子分子であっても、ポテンシャルの形によってはボゾンピークなどのガラス的挙動を示すモデルが知られており、この研究ではレナード・ジョーズなどの通常のポテンシャルで再現される現象や、高分子やシリカガラスなどの観測されるガラス的挙動と、このモデルの挙動の違いを2次元分光を用いて探査することを目指している。基礎的なプログラムが完成し、2次元分光シグナルを計算するためにプログラムの拡張を行っている。プログラムは容易に高分子ガラスや水などにも拡張出来るように作成されている。
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