研究概要 |
前年度の研究により本研究の基礎となるモデルや計算手法について目処がついたので,その結果を基に本年度は自由エネルギー面と2次元分光スペクトルについて具体的な計算を行った.まず,(1)双極子系について,中心電荷とスピンによるモデル化を行い,さまざまな系に対する自由エネルギー面を,マルチカノニカルモンテカルロ法により描くことを行った.高温ではマーカスのパラボラと呼ばれる放物線状の自由エネルギー面になるが,低温ではパラボラからずれた平坦な部分が現れることがわかった.この原因については現在解析を行っている.この研究と平行して,(2)さまざまなポテンシャルで表される分子系について,2次元分光スペクトルの分子動力学シュミレーションを開始した.ガラス状態はかなり長時間のシミュレーションが必要になるが,本年度は比較的短い時間領域でも2次元分光はポテンシャルの差異に敏感反応することを示した.また,(3)プロトン移動系の2次元赤外分光スペクトルについても計算を行い解析した.2次元分光を用いると化学反応速度も分光シグナルとして直接測定されることを示した.この研究は論文としてまとめJournal of Chemical Physicsに受理され現在出版中である.これとは別に(4)双極子・双極子相互作用する分子系の2次元赤外分光スペクトルの解析的な表式も求めた.この式を用いて分子間相互作用について有用な情報が得られるか解析を行っている.
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