研究概要 |
本年度は双極子ガラス系の自由エネルギー面を描くために,Wang-Landauアルゴリズムを導入し,プログラムを作成し,さまざまな温度における自由エネルギー面を措いた。これは自由エネルギー面がダイナミックスにどのように反映するかを調べる本研究の基礎となる重要な基礎となるステップで,ガラス温度以下において正確に自由エネルギー面を措く研究はこれまで,ほとんどないが,本研究によりその詳細が理解できた。この結果は論文にまとめられJ.Chem.Physに発表した。また,2次元ラマン分光を解析する新手法を開発し,非線形分極率や非調和振動子性の寄与を,実験データやシュミレーションデータから直接解析できるよになった。2次元赤外分光においては,これまで諸外国の多くの研究者が用いていた確率過程的モデルの妥当性を検証する理論体系を構築し比較した。熱浴との非線形の結合が,確率過程的ゆらぎの源であること,非調和振動子系の場合は,線形の熱浴との結合も不均一広がりを及ぼすことを示した。これらの結果はJ.Chem.Physや,J.Phys.Soc.Jpnの論文として掲載された。分子動力学的手法により多次元分光の信号を効率よく計算する,平衡・非平衡ハイブリッドアルゴリズム法も開発し,アセトニトリルやホルムアルデヒトなどこれまで計算されていなかった溶液の2次元信号を計算することにも成功し,溶液の分子間相互作用について解析を行った。現在は開発した2次元ラマン用のプログラムを2次元IR用に拡張している。
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