研究概要 |
本研究は,概念的に新しいアセチレン類の環化反応の開拓により優れたπ共役化合物群を創出し,これをもとに材料科学の新たな局面を切り拓くことを目的とする.本研究では特に基本骨格としてラダー型π電子系に着目し,その骨格形成反応の開発に取り組んだ.幾つかの新規環化反応を開拓し,重要なπ電子系化合物群の創製に成功した.その成果は以下の4つにまとめられる. 1.ジイン類の還元的Bergman環化反応の開拓:endo-endo様式で進行するジイン類の分子内環化反応として知られるBergman環化反応のアニオン版である「還元的Bergman環化」の開拓に取り組み,環状o-ビス(シリルエチニル)ベンゼンを基質に用いたendo-endo型分子内還元的環化の開発に成功した.本反応は,官能性ポリアセン合成のための素反応として有用である. 2.ケイ素・炭素架橋オリゴ(p-フェニレンビニレン)の一般的合成法:ジフェニルアセチレン類の分子内二重還元的環化反応をもとにシラインデン類およびケイ素・炭素架橋オリゴ(p-フェニレンビニレン)の一般的合成法を確立した.この方法論により,最長で環が13個縮環した誘導体まで合成した.得られたラダーπ電子系は,何れも高い共平面性骨格をもち,また,可視領域に強い蛍光を示した.ケイ素の効果について検討し,ケイ素部位とπ共役部位とのσ* *共役が励起状態のダイナミクスに与える影響を明らかにした. 3.種々の典型元素で架橋したオリゴ(p-フェニレンビニレン)の合成と物性:上述の分子内還元的環化反応をさらに発展させ,連続型アニオン環化反応によるケイ素・硫黄架橋オリゴ(フェニレンビニレン)類の合成を達成した.また,分子内還元的環化反応をもとに15族元素で架橋したスチルベン骨格の形成にも成功した.これらの化合物は何れも,強固なπ共役骨格を反映し,特徴的な蛍光特性を示した. 4.拡張ヘテロアセン類の一般的合成法:ビス(o-ハロアリール)ジアセチレンを用いた分子内三重環化反応による縮環1,2-ジチイン骨格の合成と脱カルコゲン反応とを組み合わせることにより,一連の縮環オリゴチオフェンの合成に成功した.この方法論の一般性,汎用性を精査,改良するとともに,得られてくる.一連の誘導体の光物性,電気化学特性を明らかにした.
|