研究概要 |
初年度にあたる本年度は,その調製法を確立しつつある両親媒性PS-PEG分散パラジウムナノ粒子を利用し,ナノ粒子触媒ならではの高活性,水中機能性,高分子マトリクス利用の優位性である回収再利用,の3つのアドバンテージをあわせ持つ有機分子変換工程の開発を推進した.具体的には不均一触媒系でのアルコール類の水中酸素酸化に挑戦,確立した.アルコール類の酸化反応は有機合成化学の根幹をなす基本変換工程であるにも関わらず,汎用性に富む合成反応としては未だにクロム酸酸化,DMSO酸化など量論量の環境負荷物質や不快物質の共生成を避け得ない手法が利用されている未成熟な工程である.「不均一触媒系水中酸素酸化」はアルコール酸化の最終型となりうる.高原子価パラジウムがアルコールの酸素酸化を触媒することは既報であるが,主にベンジルあるいはアリルアルコールに限定されており,水中での脂肪族アルコールの酸素酸化についてはSheldonらの報告がある(Science,2000).ナノ粒子触媒では高触媒活性が期待される.すでに予備的知見ではベンジル,アリルアルコールはもとより,脂肪族環状および鎖状アルコールの酸化工程において極めて良好な結果を得ている.これら酸化触媒の一般性,汎用性の確立,さらには適用限界の精査,触媒反応機構研究などを推進するとともに,ワッカー型酸化反応などへも発展・展開し成果を得た.また種々の水素化反応,還元反応などにおける水中触媒活性はpromisingな課題に過ぎるものの,初年度における基本的触媒特性の確認として徹底した検討を行い、成果を挙げた.
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