研究課題/領域番号 |
15205018
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
稲辺 保 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20168412)
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研究分担者 |
内藤 俊雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20227713)
田島 裕之 東京大学, 物性研究所, 助教授 (60207032)
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キーワード | フタロシアニン / 二次元π積層構造 / 部分酸化塩 / 電気伝導性 / 負の磁気抵抗 |
研究概要 |
平成16年度は以下のような研究成果を得ている。 (1)階段状積層構造を形成する大環状π共役系配位子錯体の[Co(Pc)(CN)_2] (Pc=phthalocyaninato)の部分酸化塩として、板状晶の[PXX]_2[Co(Pc)(CN)_2]・CH_3CN (PXX=6,12-dioxaanthanthrene)の単結晶を昨年度得ているが、この結晶中ではPc環が等方的な二次元積層構造を形成している。部分酸化状態についての情報が無かったが、新たに得られた類似構造をもつ[PXX]_4[Co(Pc)(CN)_2]・CH_3CNとの比較により、Pc環はほぼ0.5e酸化されていることが示唆され、また電子スピン共鳴の測定により、Pcのπラジカルによる信号を明確に観測した。常圧下での伝導度は小さな活性化エネルギーをもつ半導体的な挙動を示すが、高圧下では金属的な振る舞いが現れ、5Kまでこの挙動が維持されることが見出された。現在、電子状態と物性の詳細について調べている。 (2)磁気モーメントを導入したFe(Pc)(CN)_2を成分とする部分酸化塩でも、Co塩と同形の[PXX]_2[Fe(Pc)(CN)_2]・CH_3CNの作成を目指した。結晶成長条件を調節することでこの塩の作成に成功し、構造を決定した。一次元系ではFe塩の伝導度はCo塩よりも必ず低かったが、この系では室温で同程度であることが見出され、次元性の増加の効果であると考えられる。現在圧力下伝導度と磁気抵抗、磁気物性の測定に取りかかっている。 (3)メリト酸アニオンを用いることで特殊な螺旋構造をもつπラジカルカチオン塩が得られ、水素結合ネットワークを用いることで特殊な構造を実現できることが明らかになった。
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