研究概要 |
平成18年度は以下のような研究成果を得ている。 1.一次元導電体として一連の部分酸化塩、TPP[Co^<III>(Pc)L_2]_2(L=CN,Cl,Br)の作成方法を検討し、新たにCo^<II>(Pc)からのsingle step結晶成長に成功した。原理は簡単だが、用いる溶媒に大きく影響されるため、条件の選択が鍵となる。得られた3種の結晶は同形で、π-π相互作用は軸配位子の太さによって若干変化することが分かった。また、昨年度、L=CNの結晶について低温での熱活性型の伝導挙動の不純物効果について調べ、伝導挙動が電子相関効果によって支配されている可能性が示唆されたが、新たに^<59>Co NQRによって電荷の不均化が起きていることが確認された。さらに、電流・電圧特性を詳細に調べた結果、非線形伝導挙動が見出され、高電場によって不均化が融解する可能性が示唆された。この手洗をFe系にも拡張し、磁気モーメントの効果について予備的に検討した。 2.二次元電子系を持つ導電体、[PXX]_2[Co^<III>(Pc)(CN)_2]・CH_3CNは圧力下で金属的な導電挙動を示すが、PXXの伝導への寄与について、PXXのみが部分酸化状態の類似構造の4:1塩の伝導度の圧力依存性により調べた。その結果、PXXの一次元カラムによる導電性は圧力下でも低く、金属伝導がPc環のπ-π相互作用によって生じていることが確立された。 3.新たなM^<III>(Pc)L_2 unitとしてM=Crの化合物を得た。L=Brの一次元導体結晶では、対応するCo、Fe系に比べ2桁以上比抵抗が大きく、磁気モーメントの効果がより大きいことが分かった。 4.新規導電体、ET_3(Br_3)_5が得られ、構造・物性を調べた。ETの酸化状態が5/3+と異常に高いが、金属的な伝導性と全温度領域のPauli-like常磁性を示した。
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