研究概要 |
3/4-filled系の純有機物超伝導体β"-(ET)_2SF_5CH_2CF_2SO_3について一軸圧縮による物性制御を行った。伝導面内b軸方向への圧縮によってT_Cが上昇することや、伝導面内のα'軸方向への圧縮によって超伝導相の近傍に非金属相が誘起されることを見出した。また、1/2-filled系の新規錯体κ-(ET)_4[M(CN)_6][N(C_2H_5)_4]-2H_2O(M=Co^<III>,Fe^<III>)において特異な電荷整列現象を見出した。(EDO-TTF)_2PF_6の光誘起絶縁体-金属相転移が1.5psで完了することが判った。転移過程において光反射率の振動的変化が観測された。絶縁相において、この振動周期にほぼ対応する振動数を持っRaman散乱が観測され、電子-格子相互作用がこの光誘起相転移に重要な役割を果たしていると推定された。 多成分系イオン錯体(TBPDA)_2(C_<60>^<・->)(D^+)(D=TDAE,Cp^*_2Cr,Cp^*_2Co)の単結晶を得た。TDAE塩とCp^*_2Co塩は各々60K、40K以下でg因子分裂とEPRスピン磁化率の減少を示し、反強磁性的な短距離秩序を持つクラスターの生成を示唆している。 イオン液体(EMI)(FeCl_4)が高導電性-常磁性液体であることを見出した。凝固により磁気モーメントが0.03μ_B程度増大し、4.2K以下で反強磁性秩序を示す。また、室温溶融単純塩としては最も高い室温伝導度(3.3×10^<-2>Scm^<-1>)を示す(DMI)[N(CN)_2]を作製した。 インドリンとTCNQからなる分子内電荷移動化合物において、長鎖アルキル基の効果による低融点物質を得た(融点の最小値:95℃)。融解後に冷却すると、無定形の過冷却状態になるが、70℃で再加熱することにより最初の相とは異なる結晶相に転移する。流動性と自己凝集能の兼ね合いが起因していると考えられる。
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