研究概要 |
これまで自己配位組織化により,スペシャルペアを構成単位とするアンテナ超分子系と電荷分離系の最適化を行ってきた.16年度は,先に報告した光捕集アンテナLH2モデルの環状構造を証明するため,GPCにより分画した試料について,溶液のX線小角散乱を測定し,その解析結果から六量体と五量体環状構造であると推定した.走査型トンネル顕微鏡により環状構造を確認した(J.Org.Chem.).またこのLH2モデルの構造を基に,ビスイミダゾリルポルフィリン三量体三分子からなるアンテナリングLH1モデルを構築し,リング内への三座配位子の固定化によりLH1-反応中心複合体モデル化を可能にした(J.Am.Chem.Soc.).また,光捕集アンテナ錯体へ用いるため,化学的に安定で,長波長域に高い吸光度を有するフタロシアニン環を結合したポルフィリン組織体の合成に成功し,クロロフィルに勝る特性を明らかにした(Tetrahedron Lett.). 反応中心のスペシャルペアの役割を解明するため,イミダゾリルポルフィリンに異なる酸化還元電位の電子アクセプターを,距離を変えて固定した二量体を合成し,ピコ秒過渡吸収測定により電荷分離速度と電荷再結合速度を測定した.相当する単量体と比較すると,二量体を形成することにより電荷分離速度は加速し,電荷再結合速度は減速し,電荷分離効率を高めることを見出した.このことにより,スペシャルペアの光合成における役割を化学的に解明した(Chem.Eur.J.).
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