研究概要 |
これまで自己配位組織化により,スペシャルペアを構成単位とする光捕集アンテナ超分子系と電荷分離系の最適化を追求してきた.17年度は,先に報告したビスイミダゾリルポルフィリン二量体を構成単位とする光捕集アンテナLH2環状モデルのアンテナ機能を証明するため,フェムト秒レーザーを使い超高速分光研究を行った.環状5量体,6量体内のフェニレン環が架橋するスペシャルペア間のエネルギー移動速度を8.0ps,5.3psとそれぞれと見積もることに成功し,LH2モデルにおける励起エネルギーホッピングを証明した(Chem. Eur. J.).また,光捕集アンテナ錯体へ用いるため,化学的に安定で長波長域に高い吸光度を有するフタロシアニン環にイミダゾリル基を直接導入することによって,イミダゾリルフタロシアニン二量体の合成に成功し,ポルフィリン系と同様の化学が展開できることを示した(Angew. Chem. Int. Ed.). 更に報告している金基板上に光捕集アンテナ系を伸長した色素増感太陽電池系の改良を行った.配位結合で出来た錯体をグラブス触媒によるメタセシス反応により共有結合で固定し,安定な光捕集アンテナによる光電変換特性を向上させた(Chem. Eur. J.). フェロセンを"蝶番"に用いて,ポルフィリン連鎖体内のポルフィリン間の連結角度を可変にすることにより,様々なサイズの大環状ポルフィリン組織体の構築に成功した.10量体は直径10nmの巨大環状体で,STMにより単一分子像を観測した(J. Am. Chem. Soc.).,同様にフェロセンをスペシャルペア電荷分離系の還元末端に組み込む新手法を確立した(New. J. Chem.).
|